名古屋大学(名大)は、東京大学と共同で、サファイアの内部に13nm周期に高密度な導電性配線を形成することに成功したと発表した。

同成果は、名大大学院 工学研究科マテリアル理工学専攻の中村篤智准教授、松永克志教授らによるもの。東京大学大学院 工学系研究科の幾原雄一教授、同大 学生産技術研究所の溝口照康准教授らと共同で行われた。詳細は米国化学会(ACS)発行のナノテク専門誌「ACS Nano」に掲載された。

サファイアは、透明かつ高い硬度を有するとともに、高い絶縁性を有する化学的に安定した結晶であり、過酷環境下の構造部材や絶縁体として工業分野でも広く利用されている一方、安定で頑強な結晶構造のため、導電性を付与することが難しかった。

今回、研究グループでは、サファイア結晶内部の原子配列のずれ(転位)による極小の空間空隙が、わずかに方位の異なる2つの結晶の境界に規則正しく形成されることを利用して、サファイア内部に周期的な導電性細線を数千万本形成することに成功した。細線を利用するには、その配置の制御が必要となり、これまで密度や配置を正確に制御することができなかったが、今回の研究ではそれらの課題を解決する技術を開発することで、13nm周期のTi線と90nm周期のTi線の作製に成功したという。線径は直径3~4nmで形成されたが、同手法による配線周期の限界は約2nmであることも確認したとする。

なお研究グループは、今回の成果について、配線や記録媒体のさらなる高密度化、ナノテクノロジーとの融合、超高温下や宇宙といった過酷な環境下で使用できる電子機器の実現、安定性を利用した長期記憶可能な記録媒体などが期待できる原子配列制御の究極な形の1つとコメントしている。

(左)導電性細線の形成方法と、(右)透過型電子顕微鏡写真