fuROの古田貴之 所長 |
千葉工業大学(千葉工大) 未来ロボット技術研究センター(fuRo)とヒューマンエヌディーは7月8日、2013年9月をめどに小中学生を対象とした「将来のロボット博士育成」を目指す、新たな教育プログラム「ロボティクス プロフェッサー コース」を開講することを発表した。
ヒューマンエヌディーは、キッズスクール事業などを展開してきており、これまでにもヒューマンキッズサイエンス「ロボット教室」として、子どもたちを理科好きにすることを目的とした教育プログラムを開発、提供してきたが、そうした活動の中で、将来的にロボット工学博士を目指したい、高性能なロボットを作るために、より高度な技術や知識を身に付けたい、ロボット作りを通して数学や理科の成績を伸ばしたい、といった声を生徒や親から受けるようになっていたという。しかし、本格的なロボット工学博士やエンジニアを目指すための専門知識を学ぶための子ども向け講座はほとんど存在していないことから、今回、教材の企画・開発からテキスト製作および授業内容の立案まで、fuROの古田貴之 所長とfuRoが教育プログラムすべてを総監修、総製作する形で、そうしたニーズに対応する講座を開設することを決定したという。
同講座の特長は大きく3つ。1つ目は、人型ロボットを作る技術など、本格的なロボット工学を学ぶための組込コンピュータリングプログラミングや人工知能などのアルゴリズムなどを、ロボット製作やプログラミング実習を通じて、高度な技術をわかりやすく指導・解説することで、将来の本格的なロボット関連技術や専門的なロボット工学を学ぶ基礎力をつけることが可能という点。2つ目は、体感できる教材やテキストなどを活用することで、ロボット工学の基礎である数学や物理を好きになってもらうことを目指し、最終的にはロボット産業の活性化に貢献する人材の育成につなげる点。そして3つ目は、中学の数学・物理の指導要領や教科書の内容と意図的に対応付けすることで、知らず知らずのうちに学校の勉強内容を理解することが可能になるという点だ。
fuROの古田貴之 所長は、なぜfuRoがこうした取り組みを行うのかという点について、「fuRoの目的は未来を創ることだが、この5~6年、啓蒙活動としてロボットの授業を全国各地の学校で実施し、多い年では年間200校の高校で講演をしたこともある。しかし、あまりに多忙で、fuRo単体でのそうした活動の限界を感じていたこと、ならびにロボット技術を活用し、アジア諸外国に真似できないビジネスを生み出していくために必要なのは未来を創るためのロボット博士を教育により育てることが必要だと感じていたこと」と説明。ロボット工学と数学や物理には密接な結びつきがあるものの、既存の学習では隔たりが存在しており、その隔たりを超えるカリキュラムを用意する必要があると考え、今回の協力関係構築に至ったとする。
fuRoが考えるロボット博士は広義ではロボットを作る人を指すが、カリキュラムでは、そのためには何が必要なのか、という点や、本当にロボットを扱うためには数学や物理が必要であり、それを知らなければ強いロボットにはなれないこと、そしてロボットの勉強をしていると、いつの間にか数学や物理の集合体であることを理解し、それらを好きになってもらうことが目的となっている。
そうしたことを実現するために、Arduinoをベースとしたロボットを操作するコンピュータセットも独自に開発したほか、オムニホイールロボットなども開発。カリキュラムはそれらを活用することで、どうやればロボットが自在に動くようになるのか、プログラミングをどのようにすればよいのか、などの理解から数学や物理の理解へつなげていくものとなる予定で、世の中で実際に使われているロボットがどういうシステムでできているのか、どうやったら作れるのかまで教える内容になるとしている。
講座に提供されるオムニホイールロボット(左)とそのコントロール基板となるArduino。Arduinoが選ばれた理由としては、低コストで入手しやすいという点もあるが、関連書籍が多く、入手もしやすいという点も考慮されたという |
なお、当初の教室は10程度(大阪/東京が4、名古屋が2)で生徒数は150名程度を見込み、そこで実際に教育が円滑に進められるかどうかを試験的に進め、1年後には100教室を目指したいとしている。中学生、およびヒューマンエヌディーがこれまで提供してきたロボット教育講座を修了した子どもを当面の間、対象とする予定でカリキュラムを構築していく予定としている。
開講は2013年9月だが、現時点で月2回コースにするか、4回コースにするかもまだ決まっていないとしており、授業料も暫定として、1万2000円/月を考えており、それ以外に材料費が毎月1300円程度、その他、入会金なども発生する予定だという。
ちなみに古田所長は、「普段のロボット開発と違って、コストに非常にシビアな開発。何千円という単位でロボットを開発するという挑戦は初めてだったが、良い教材を開発し、よい教育を提供したいという思いは強い。オムニホイールロボットなども通常の値段を考えると、なかなか買えないものなので、そういったものに実際に触れてもらい、詰め込み型による作業ではなく、あらゆる動作を自分で考えて、自由にやらせる時間を多く用意したい」と意気込みを語っている。