各分野の専門家の方にお勧めの書籍を紹介していただいている本企画。今回は、システム運用に精通する原田旨一氏に紹介をお願いしました。ITだけに限定せず、チーム作りやゴールを共有するための書籍も取り上げていただきました。ぜひ参考にしてください。

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プロフィール

原田旨一(HARADA Munekazu)


インフォメーション・ディベロプメント株式会社 ITプラットフォーム・サービス事業本部 iD-Cloud & Securityサービス部 営業戦略統括グループ グループマネージャ。

顧客先に常駐して、ホストやサーバーのオペレーター、運用管理者、運用主任責任者を勤め、ユーザー視点で運用業務に関わってきた。その後、本部勤務となり、現在はベンダー視点で運用業務に関わり、企画グループ、営業グループ、技術グループを統括し、さらに労働集約型からサービス化(知識集約型)へ転換させるためのクラウドビジネスを推進している。

『ITIL V3 ファウンデーション』
 ――著者 : 日立システムアンドサービス、発行 : 翔泳社

『ITIL V3 ファウンデーション』

私は、個々のシステムや機器をスケジュールに沿って実行するシステムオペレーター、全体感を持ってシステム単位のスケジュールを組む運用管理者、顧客のビジネスにおけるITサービスを考える運用管理責任者とキャリアを積んできました。

その中で、ITILが世の中に出始めた頃、ITIL導入に関するセミナーを受講しました。そこで体系立ててシステム運用を整理することで、業務がうまく進んでいくことに気付きました。

本書は試験対策本ですが、試験を目指さない人にもお勧めします。特にITILにおける問題管理とインシデント管理について、実際の導入事例なども挙げながら説明しています。

まずはこの2つを入り口として学ぶと、ITILに対する理解が早まり、システム運用の質も向上します。もっと深く学びたい人はITILの原本を読むことをお勧めします。

『組織デザイン』
 ――著者 : 沼上幹、発行 : 日本経済新聞社

『組織デザイン』

何かしらの役職を持ち、部下を持っている人にお勧めします。

組織形態の基本や分業のタイプ、標準化、作業の流れ、コミュニケーションデザインにおけるヒエラルキーなど、組織の基本と一般的な問題点、およびその解決策を説明している書籍です。

私自身が運用責任者になった際、この中の手法が役に立ちました。

例えば分業。システム運用の業務は、全体のサービスが見えず手段が目的化してしまうケースが多々あります。このことを理解するうえで分業の基礎知識は役立ち、さらに配下に作業の目的を説明する際にも役立ちました。

また、分業を進めると習熟度が早まる反面、モチベーションの低下などの問題が発生します。そんなとき、短期の要員の育成にも本書が重宝しました。

『ザ・ゴール』
 ――著者 : エリヤフ・ゴールドラット、発行 : ダイヤモンド社

『ザ・ゴール』

組織内のボトルネックを解消し、生産性を向上させる手法を説明した小説仕立ての書籍です。具体的には製造現場での物理的な制約条件を見つけ出し、会計の制約条件や企業ポリシーの制約条件までの発展の可能性を示唆しています。

私は品質改善の視点で本書を参考にしました。品質改善におけるTCOは、輪と輪がつながったチェーンをイメージするとわかりやすいでしょう。チェーンを力いっぱい引っ張ると、どこかの輪が壊れてチェーンが切れます。この壊れた輪がボトルネックであり、この輪を強化することでチェーン自体の強度が増します。

この考え方を運用品質の向上の観点で取り入れたことがあります。プロセスにはスケジューリングや処理の開始、データの入力、処理の実行、データの出力、発信・発送・保管などの後処理があります。業務は基幹系や情報系といったシステム単位の業務です。このマトリクスの中で最もミスが起こりやすいセルを特定し、当該プロセスの当該システムに対してミスを防止する策を追加することで、システム運用全体の品質が向上できます。

過去の一定期間で発生したIT運用管理の問題
スケジュール 実行/監視 マウント 出力 仕分/送信
A業務 0 0 1 2 0
B業務 0 0 0 0 0
C業務 1 0 0 1 1
合計 1 0 0 3 1