ユビキタスエンターテインメントはこのほど、都内にて同社が開発したタブレット端末「enchantMOON」の発売記念イベントを開催した。
このイベントには、同社の代表取締役社長兼CEOの清水亮氏が登壇。予想以上の注文が殺到し、一度は発売延期となった同機だが、このたび予約分の発送が開始された。清水氏は、まずは発売を迎えた証となる、量産に成功した「enchantMOON」を披露。その後、「enchantMOON」発売に至るまでの同社の道のりを語った。
同社は、ハイパーテキストを「思考の道具」とすべく、未踏ソフトウェア創造事業に採択された「Zeke OS」、iOS/Android向け手書きメモアプリ「ZEPTOPAD」シリーズなど、さまざまな挑戦を続けてきた。その経験を元に、ハードウェアやOSの制限を受けた状態では、手書きの精度などを理想的な状態にすることはできないと感じたという。そこで、OSからハードまで自社で手がけるタブレット端末「enchantMOON」の開発がスタートした。
まず、最初に着手されたのは、HTML5とjavascriptを用いたゲームエンジン「enchant.js」の開発だった。このエンジンをさらに簡易にし、同社が電通との実習などを通じて感じた"プログラミングの壁"を越えることができるようなものを、と開発されたのが、ミニ四駆ブームの立役者・前田靖幸氏が手がけたビジュアル言語「前田ブロック」。「enchantMOON」に搭載されているブロック型プログラミング言語「MOONBlock」は、この「前田ブロック」が元になっている。
また、このタブレット端末の開発には映画監督の樋口真嗣や哲学者の東浩紀、イラストレーターの安倍吉俊といった著名な人物が関わったことでも話題になっている。しかし、実はそのほかにも、同機の開発には東京大学の西田友是教授や、大手通信会社に勤務していたプログラマー・濱津誠氏が携わっていたと明かした。清水氏は、このほかにも多くの社員が携わったことで同端末のリリースを迎えられたことに言及し、「今後、(弊社は)ソフトウェアの会社ではなく、コンピューターの会社と名乗ることができるようになります」と感慨深げに語っていた。
そして、発表の最後には、発売日前日に急逝したプログラマーで、「Winny」の開発者として知られる金子勇氏の訃報についてコメント。生前、金子氏と交流のあった清水氏は「(enchantMOONを)見せてあげたかったです」と悔しげに語り、金子氏が「コードがどのように世の中を良くしていくのか、誰よりもよく知っていた人間だ」と称えた上で、「悲しんでいる暇はないので、enchantMOONを通じてコードの素晴らしさを世に伝えていきたい」と締めくくった。
なお、「enchantMOON」の今後について、7月中に一度マイナーバージョンアップを行った後、8月に開発者けイベントを開催するとのこと。そして、まだ詳細は明かされていないものの、同機やタッチパネル式のテーブルなどを利用したオフィス環境となる「enchantOffice」なる新たなプロジェクトも公開された。
ちなみに、同機のこれまでの予約分発送と同時に、新規購入の予約受付が再開されている。マイナビニュースでは「enchantMOON」のタッチ&トライレポートおよび端末名の由来に迫る記事を掲載しているので、こちらを参考にしつつ、この新たな端末を手にするかどうか検討してみてほしい。