日本HPは、HPシンクライアントに標準搭載されている、シンクライアント製品の画面転送品質を改善するソフトウェア「HP Velocity」の機能拡張を図り、7月より出荷する端末において標準対応すると発表した。また、Microsoft Lyncにも正式対応した。

今回の機能強化は、クライアント仮想化、UC(ユニファイドコミュニケーション )、無線LAN利用時のスループットを改善するもの。

HPのシンクライアント端末

クライアント仮想化、UC、無線LANは、いずれもネットワークのレイテンシー(データ転送などを要求してからその結果が返送されるまでの遅延時間)の影響を受けやすく、シンクライアント導入時の大きな課題となっているという。

日本HP プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション本部 本部長 九嶋俊一氏

日本HP プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション本部 本部長 九嶋俊一氏は、「弊社のシンクライアント端末の出荷台数は、この3年、毎年50%程度伸びており、1万台を越えるような大規模な導入も増えている。このとき、ネットワークが遅いと画面がカクカクし、PCに比べて使い勝手が悪いと導入に際し大きな課題になる。また、最近の働き方改革で、マイクロソフトのLyncを中心にUCの実装が増えてきている。ただ、UCと仮想化は相性が悪く、水と油の関係にある。さらに最近は、無線LANの環境で利用するケースが多いが、品質はあまり良くない。 レイテンシーが30ms以上あると、動画の再生はできない」と、シンクライアント環境化でのネットワークの問題点を指摘した。

パケットロスとレイテンシーが与える影響

「HP Velocity」の新機能は、クライアント仮想化と無線LAN環境のスループットを改善する。これは、パケットロスや輻輳(ふくそう)の増減など、ネットワークの状態変化に応じて動的にTCPのアルゴリズムを最適化することで実現した。OS標準では、アルゴリズムは1つの限定されが、「HP Velocity」では、複数のアルゴリズムを使い分ける。

同社によれば、マイクロソフトのRDP(Remote Desktop Protocol)では最大10倍、シトリックスのICA(Independent Computing Architecture)では2倍以上にスループットが向上するという。

「HP Velocity」によるスループットの改善(シュミレータによるテスト)

また今回の機能拡張では、シンクライアントと仮想PC間のネットワークをモニタリングするツールに、レイテンシー、シンクライアントの構成情報、CPU及びメモリの使用率を取得する機能を追加し、問題解決や性能改善の指標を提供する。

UCの環境改善では、同社のシンクライアント端末が、Microsoft Lyncのプラグインに対応することで、Lync利用時のスループットを改善する。具体的には、シンクライアント端末にプラグインをインストールすることで、サーバ側で行っているエンコード/デコードをシンクライアント側にオフロードする。

Lync 2013の場合はMicrosoft Lync VDI 2013 Plug-In、Lync 2010の場合はCitrix HDX RealTime Optimization Pack for Microsoft Lyncを利用する。ただ、プラグインの利用はクライアントのCPUに負荷がかかるため、対応する端末は現状、HP t610 Thin Client、HP t510 Thin Client、HP t5740e Thin Clientの3機種のみになっている。

新機能を搭載する製品