東京都現代美術館は、ジブラルタル海峡に海を渡る子どもたちの列によって橋をかけるという壮大なプロジェクトを紹介する「フランシス・アリス展 GIBRALTAR FOCUS ジブラルタル海峡編」を開催する。開催期間は6月29日~9月8日(7月15日を除く月曜と7月16日は休館)、開場時間は10:00~18:00(7月19日以降の金曜は21:00まで開館、入場は17:30まで)。入場料は一般1,100円、大高生・65歳以上800円、中高生600円、小学生以下は無料。

《「川に着く前に橋を渡るな」のための習作》油彩、鉛筆/ トレーシングペーパー

《川に着く前に橋を渡るな》2008年 ジブラルタル海峡 アクションの記録映像と写真 Photo:Jorge Golem

同展では、国際的に注目されているアーティストの一人、フランシス・アリスが2008年にジブラルタル海峡にて実施した「川に着く前に橋を渡るな」プロジェクトを、映像、絵画、立体作品、写真、ドローイングなど、多様なメディアを通して紹介する。このプロジェクトは、ヨーロッパとアフリカを隔てるジブラルタル海峡に、想像上のひとつの橋を架けるというアイデアからスタートしており、2008年、サンダルに帆を立てて作ったおもちゃの舟を手に持ったこどもたちがスペインとモロッコ、それぞれの海岸から一列になって対岸に向かって泳ぎ、水平線の彼方で出会うことで、ひとつの橋が立ち現れるというものだ。この作品によって、作家はグローバル化社会において、人の移動はこれまで以上に管理されていくという現代社会が抱える矛盾に疑問を投げかけており、移民問題を背景にした同様の「橋」プロジェクトとして、2006年にキューバとアメリカで実施した「Bridge/Puente」もある。

《トルネード》2000-10年 ミルパ・アルタ アクションの記録映像 Photo:Jorge Golem

《実践のパラドクス1(ときには何にもならないこともする)》1997年 メキシコシティ アクションの記録映像(5分) Photo: Enrique Huerta

なお、フランシス・アリスは1959年ベルギーのアントワープ生まれの美術家で、現在はメキシコシティに在住。90年代後半よりヴェネツィア・ビエンナーレなどに招待され、国際的に注目される。2010年にロンドンのテート・モダン、翌年にはニューヨーク近代美術館で大規模個展が開催されている。特定地域の社会的な問題をテーマにしながらも、誰もが共有できるような、詩的でウィットに富んだ作品に昇華させる表現力が評価されている。日本初個展となる同展は、メキシコで制作した作品を中心に、アリスのこれまでの活動を概観した「MEXICO SURVEY メキシコ編」(2013年4月6日~6月9日)に引き続き開催されるものとなる。