STMicroelectronicsは、スマートフォンやタブレットなどの機器内部の複雑化する回路に対応することを目的として、携帯機器用RFフロントエンドICの性能向上と小型化を実現するために最適化された先端プロセス技術「H9SOI_FEM」を発表した。
ワイヤレス機器のRFフロントエンド回路は、通常、個別のアンプ、スイッチ、チューナで構成されており、現在の主流である3G通信では最大5種類の周波数帯が利用されるが、次世代4G LTE向けの3GPP規格では、最大40種類の周波数帯に対応する必要があり、従来同様の個別コンポーネントでの対応を図る場合、回路全体が大型化するという課題があった。
同プロセスは、同社が2008年に発表したSOIプロセス「H9SOI」をフロントエンド回路向けに最適化したもので、アンテナ・スイッチおよびアンテナ・チューニング・デバイスでオン抵抗(Ron) Xオフ容量(Coff)207fsを実現することが可能だという。
デュアル・ゲートMOSFET(1.2V/2.5V)を構築するプロセス・ノードは0.13μmを採用しており、従来のSOIプロセス(RFスイッチのようなディスクリート・デバイス用プロセスなど)とは異なり、GO1 MOS、GO2 MOS、最適化されたNLDMOSといった複数のテクノロジーに対応しているため、RFフロントエンドICに搭載される主要機能(RFスイッチ、低ノイズ・アンプ、マルチモード・マルチバンド対応携帯通信パワー・アンプ、ダイプレクサ、RFカップリング、アンテナ・チューニング、RF電力マネージメントなど)の完全なモノリシック集積が可能だ。
また、GO1 MOSは、高い性能を持つ低ノイズ・アンプに適しており、ノイズ指数1.4dB(5GHz時)を維持しつつ、限界周波数(Ft)60GHzを実現できるため、安全マージンを備えた5GHz設計が可能になるという。
さらにGO2 CMOSに加え、GO2 NMOSは、RFスイッチで利用される技術で、これによりアンテナ・スイッチおよびアンテナ・チューニング・デバイスとしてオン抵抗(Ron)Xオフ容量(Coff)207fsを実現することが可能なほか、GO2高電圧MOSは、パワー・アンプおよび電力マネージメント機能の集積を可能にしており、これによりパワー・アンプにおいて、限界周波数(Ft)36GHzと電力効率60%(飽和状態、低周波数帯GSM)を実現することができるという。加えて、電力マネージメントについては、ブレークダウン電圧12VのPLDMOSテクノロジーにより、デバイスをバッテリに直接接続することが可能だという。
なお、カスタマはすでにH9SOI_FEMを利用した製品の新しい設計を開始することが可能だとのことで、量産対応は2013年末までに開始する予定だとしている。