岡山大学は6月21日、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染認識に関わる新しい宿主因子を突き止め、その分子機構を明らかにしたと発表した。

同成果は、同大大学院医歯薬学総合研究科腫瘍ウイルス学分野の團迫浩方 助教、同 加藤宣之 教授、米国ノースカロライナ大学の山根大典 研究員、同 Stanley M Lemon 教授らによるもの。詳細は米国のオンライン感染症専門誌「PLoS Pathogens」に掲載された。

今回の研究は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染認識機構の全容解明に向けて行われたもので、その結果、感染細胞内でHCVが複製することにより生じる二本鎖RNA を「非自己」として認識する宿主因子を新たに同定したという。

この「クラスA スカベンジャー受容体」と呼ばれる宿主因子は、HCV感染細胞由来の二本鎖RNAを細胞外で認識し、その下流の抗ウイルス機構を活性化することに関与していることが確認されたほか、同因子を介して、HCV感染細胞から非感染細胞に抗ウイルスシグナルが情報伝達されていることも判明したという。

今回の研究の結果、C型慢性肝炎患者の肝臓内におけるクラスA スカベンジャー受容体の発現量により、HCV量が調節されている可能性があることが示唆されたことから、研究グループでは今後、クラスA スカベンジャー受容体の発現調節を人為的に行うことが可能になれば、体内の自然免疫応答を高め、HCV量の減少が可能になることが期待されるとコメントしている。

クラスA スカベンジャー受容体を介したHCV感染認識機構。HCVは感染後、複製により二本鎖RNAを産生。二本鎖RNAは細胞内において、RIG-Iと呼ばれる宿主因子に認識されるが、一部は細胞外にも放出され、それがクラスA スカベンジャー受容体により細胞内に取り込まれ、下流の抗ウイルス機構を活性化させる