AMDは6月19日、2014年に向けたエンタープライズ/データセンターサーバ市場向けプロセッサとして、ARMコアなどを採用した次世代Opteron 3製品を発表した。
今回発表されたのは、64ビットCPUコアであるARM Cortex-A57を搭載する「Seattle(開発コード名)」、次世代コア「Steamroller」を搭載し、「Opteron X(開発コード名:Kyoto)」の性能を倍増させる設計がされたAPU「Berlin」、データアナリティクスやxSQL、データベースなどの複雑な演算処理が求められるエンタープライズ環境での仮想化に伴う大きなワークロードに対応するよう最適化され、Opteron 6300シリーズと比較し、1Wあたりのパフォーマンスを向上させた2P/4Pプロセッサ「Warsaw」の3製品。
同社がサーバ向けにこうした異なる3製品シリーズを開発することを決定した背景には、スマートフォンを中心とするモバイルデバイスの普及拡大によるクライアント機器における描画能力の向上要求と、それにネットワーク越しにつながるサーバ側の接続数の増大や超並列演算への対応、処理能力を向上させるためのサーバ台数の増加にともなう消費電力をいかに低減させるか、といったさまざまなニーズに対応していく必要があると判断したためで、そうした課題の解決に向け、新たに以下の4つのサーバ市場向け成長戦略を策定したという。
- まったく新しいOpteronプロセッサ製品群でx86ビジネスを強化
- 新しい命令セットをCPUへ - ARM系でサーバ
- さらに高効率なサーバをSeaMicroにて開発
- 新しいオープンなビジネスモデルへ
このうち1つ目と2つ目に当てはまるのが、今回の3製品。3つ目の高効率サーバとしてはSeaMicro「SM15000」としてすでに提供されているもので、従来サーバ比で半分の電力で3倍の高密度化、10倍の帯域、3倍のストレージ容量を実現できるという。そして4つ目のオープンソースとしては「AMD OPEN 3.0」としてサーバプラットフォームの提供を進めていることをあげ、同プラットフォームを活用することで、さまざまなサイズの筐体を用途に応じて柔軟にリリースすることが可能になるとした。
また、サーバ要件として、同社では現在、1P/2P/4P製品で対応している価格当たりのスループット性能が求められる従来型の資産を活用する用途向けと、APUで対応しようとしている1ドルあたりの消費電力と性能を発揮できるか、もしくは1ドルあたりどれくらいのサーバスペースを占有するか、という分け方をしているが、これを2014年には、各ワークロード別に分けて、Berlin、Seattle、Warsawをそれぞれ、最適なワークロードに適用させていくという方向性を取るという。
BerlinはKyotoの後継として2014年上半期に販売を開始する予定の、HPCへの適用も目的としたAPU/CPUに位置づけられる製品シリーズ。Streamrollerコアを4コア搭載するほか、512コアのRadeon GPUを搭載し、ヘテロジニアス・システム・アーキテクチャ(HSA)によるCPUとGPUのユニフォーム・メモリアクセスを可能とすることで、現行のフラッグシップ製品「Opteron 6386SE」と比べて、1Wあたりのギガフロップを約8倍に向上させるという。
また、Warsawはエンタープライズ・サーバCPUとして2P/4P向けに最適化を図り、TCO削減を可能とする製品シリーズで、2014年第1四半期に販売を開始する予定。現行のOpteron 6300シリーズからのシームレスな移行を想定しており、Piledriverアーキテクチャ(12/16コア)を採用し、ソケットなどの従来製品の要件をそのまま流用することを可能としているが、命令セットの追加などにより、例えばJavaの実行性能を20%向上させるなどの最適化が図られるとしている。
そして、2GHz以上で動作するARM Cortex-A57を8コア(将来的には16コアまで拡張)搭載するSeattleは、2014年第1四半期にサンプル出荷が開始され、下期から製造を開始する計画。Kyotoに比べ、2~4倍のワット当たりの処理性能を発揮できる見込みとするほか、CPU負荷を低減する適用範囲の広いオフロード・エンジン、サーバの暗号化や圧縮、10GbEを含むレガシー・ネットワーキング、SeaMicroのネットワークファブリック「Freedom Fabric」を1チップに統合するSoCとなるとしている。
同社では今回、初めてARMコアを採用した理由して、「2012年にx86系プロセッサの出荷数は1300万台だが、ARMコアを採用したデバイスは80億個と、非常に多く、OEM/ODM、ならびにカスタマなどもARMコアに対して期待を高めており、2014年にはARMプロセッサ搭載サーバも本格的に登場することが予想されることから、採用を決定した」としており、ARMコアを採用した半導体ベンダとしては後発ながら、サーバ分野に対する技術やノウハウ、IP、ファブリックネットワークなどを有しているほか、各種パートナー企業との長年にわたる関係、SeaMicroとAMD Open 3.0によるサーバプラットフォームそのものに対する理解などの強みがあり、AMDのサーバ市場におけるポジションを高めることができるという判断したとしている。
なお、同社ではすでに今回発表したロードマップの後継となる製品なども社内的には開発が進められているとのことで、時期を見て、そうした製品の発表などを行っていく計画としている。