新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と立命館大学、クリスタル光学は6月17日、ガラス基板用研磨材に用いられる希少金属セリウムの使用量を半減できる研磨パッドを開発したと発表した。

詳細は、8月27日~29日に開催される2013年度砥粒加工学会学術講演会にて発表される予定。

図1 今回開発した研磨パッド

希少金属は、国内の産業界にとって必要不可欠な材料だが、その偏在性ゆえに中長期的な安定供給確保に対する懸念がある。中でも、セリウムはFPDやHDDなどのガラス基板用研磨材として使用されている重要な希少金属である。

NEDOでは、2008年度から希少金属の使用量低減技術および代替材料開発に取り組んできており、その中で、立命館大学 谷泰弘教授のグループは、「精密研磨向けセリウム使用量低減技術開発及び代替材料開発/4BODY研磨技術の概念を活用したセリウム使用量低減技術の開発(2009~2012年度)」として、砥粒、メディア粒子、工具、プロセス技術という4要素に基づく研磨技術の開発により、セリウムの使用量低減、および代替材料の開発を目指して研究を進めてきた(図2)。今回の成果は、4要素のうち工具(研磨パッド)に関するものとなっている。

図2 研磨に関する4つの要素(4BODY研磨)

ガラス研磨に使われる研磨パッドは、一次・二次研磨で用いられる多孔質パッドおよび不織布パッドなどと、最終仕上げ研磨に用いられるスエードパッドなどに分類される。今回は、研磨パッド全体の約50%を占めるスエードパッドの高機能化に取り組んだという。

ガラス基板の研磨は、砥粒を水などに分散させた研磨液を研磨パッドに付けて行う。研磨パッドの役割は研磨液を保持することだが、親水性が高いほど研磨液がよく保持され、より多くの砥粒がガラス表面に作用するので研磨能率が向上する。同技術の開発では、研磨パッドに多用されているウレタン樹脂に、高い親水性を有するエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂を添加することで、親水性の高いスエードタイプの研磨パッドを実現した(図3)。

図3 今回開発した研磨パッドの電子顕微鏡像

従来の研磨パッドでは、研磨液がはじかれ球状になっているのに対し、開発した研磨パッドでは研磨液が濡れ広がっており、これにより従来のウレタンパッドより高い親水性を持っていることが確認された。

図4 研磨パッドの親水性の比較

また、新たに開発された研磨パッドは、従来のウレタン樹脂からなる研磨パッドに比べて最大約2倍の研磨能率が得られることが判明。これにより、従来の半分の時間での研磨が可能となり、研磨工程における生産効率の向上や、セリウム使用量の50%低減にも繋がるほか、従来の研磨パッドよりも仕上げ面粗さが優れており、最終製品の性能向上も期待されると研究グループでは説明している。

図5 従来のウレタンパッドおよび開発した研磨パッドの研磨特性の比較

なお、今回開発された研磨パッドは、さまざまな砥粒と組み合わせることで、ガラスだけでなくLED用のサファイア基板やシリコンなどの半導体基板にも適用できるとのことで、すでに試作・評価まで終了していることから、1年以内の製品化を目指して製造技術の検討を進めていくとしている。