Fujitsu Laboratories of AmericaとMIT(Massachusetts Institute of Technology)は、オンライン学習を効果的に進める学習基盤技術を開発したと発表した。
開発した基盤は、検索エンジンやEコマースサイトなどで現在実現されているパーソナライゼーションの機能を学習の分野に適用して、学習者の理解度のレベルや嗜好に応じて最適な内容、種類、順序で学習できるように設計。大量の学習コンテンツを階層状のトピックでまとめてナビゲートする技術の開発により、学習者にとって困難であった数十万単位の学習コンテンツのナビゲーションを実現した。
また、学習者の学習行動をシミュレートする技術の開発により、システムの提供者にとって大きな課題であった学習効果の測定を、実際の学習者を使わずにシミュレーションにより実現した。
開発した技術の特長は、「大量の学習コンテンツを階層状のトピックでまとめてナビゲートする技術」、「大規模なオンラインシステムにおける学習者の学習行動をシミュレートする技術」。
大量の学習コンテンツを階層状のトピックでまとめてナビゲートする技術では、各学習コンテンツから分類に相当する概念レベルのトピックを抽出し、大分類、中分類など概念の大きさが異なるトピックを階層状に自動的に配置。各トピックは対応する学習コンテンツに紐付いており、1つの学習コンテンツは複数のトピックに対応。例えば微分積分学における導関数について理解を深めようとした場合、微分学の講義ノートや、導関数を用いる力学についてまとめたビデオなどの学習コンテンツが学習者に推薦される。
上記の例では、物理学に該当するトピック、力学に該当するトピックを経て、実際の学習コンテンツであるビデオ教材にアクセスしている。
大規模なオンラインシステムにおける学習者の学習行動をシミュレートする技術では、学習者の知識量や正答率などを確率変数としてモデル化し、複雑な学習行動を再現するアルゴリズムを初めてシミュレーションに適用することにより、大規模なオンライン学習コースにおける学習者の学習過程をより現実に近い形でシミュレーションすることに成功した。
これにより、学習者は従来型のキーワード検索では見つけ出すことができなかった学習コンテンツを簡単に見つけたり、複数のトピックに関連する学習コンテンツを利用することでより知識を深めることができ、システムの提供者はシミュレーションによって、大規模なオンライン学習システムの中から、学習者に対して最も学習効果が得られる最適な学習コンテンツを推薦する方法を簡単に見つけ出すことができるようになる。
今後、両者は、世界で最も注目されているMOOCsの一つであるedXプロジェクトへの導入を視野に入れながら、MITに設置されている将来の理想的な学習環境を検討する研究機関(OEIT:Office of Educational Innovation and Technology)、ODL(Office of Digital Learning)と協力して、本基盤の開発を進め、また、富士通の顧客である大学や企業における大規模なオンライン学習システムへの適用を推進していく。