玄関のチャイムや火災警報器などの身の回りの音を、スマートフォン(多機能携帯電話)画面の文字や光などで知らせてくれる聴覚障害者用のアプリケーション(アプリ)を岩手県立大学地域連携本部の猿舘朝(さるだて あした)プロジェクト研究員が開発した。

スマートフォンでの「おんせん」の利用例
(提供:科学技術振興機構)

同アプリはスマートフォン(Android〈アンドロイド〉端末)用として開発し、音のセンサー「おんせん」と命名した。周囲で音が鳴ると、スマートフォンに内蔵されたマイクで自動的にキャッチし、音の周波数や振動のエネルギーを分析して特徴を検出する。あらかじめ登録した音と合致すれば、スマートフォン画面に文字で表示したり、光の点滅や振動によって知らせてくれる。

同様な生活音識別システムは、これまでに専用機器が商品化されているが、コストの面や識別できる音が限られるなどの課題があった。今回開発したアプリは、他にもやかんのお湯が沸騰した時の警笛音や電話着信音など、計10種類の生活音を精度よく識別でき、利用者が知らせて欲しい音を追加登録することもできる。独自の音響処理技術によって、一般家庭でうるさい場所でも、知りたい音をリアルタイムで識別できるようにした。

この技術は聴覚障害者だけでなく、屋外や工場での異常検知システムとして利用したり、Wi-Fiなどの無線LANを使ってスマートフォン端末同士をつなぐことで、外にいる家族にも家の様子を知らせてくれる高齢者の“見守りシステム”としての応用などが期待される。

猿舘研究員らは「株式会社クリアフィックス」を設立させ、今年12月ごろまでに、同アプリの有償版や一部の機能を制限した無償版を提供し、製品の普及を図るという。

今回の開発は、JST研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)研究開発課題「Android端末を用いた事前登録型生活音識別システム」によって行われた。

関連記事

ニュース【GPSとスマートフォン結び視覚障がい者支援システム】

ニュース【聴覚障害者への支援は十分か】