ビジネスにますますスピードが求められるようになるなか、情報システムにもまたそれを支援すべく柔軟かつ素早い変化への対応が必要とされている。そのため、システム開発期間の短縮化は避けられない状況となっているが、開発期間に余裕が持てなくなったことによるトラブルもまた多々生じてしまっている。典型的なのが、ユーザー企業がいざ導入して運用フェーズに入った途端、さまざまなトラブルが顕在化してしまうといったケースだ。
このような事情から、昨今システム開発における「テスト」の重要性が叫ばれ始めている。とりわけ重要視されているのが、本番稼働直前に行う「受入れテスト」だ。しかしこの受入テストは、多くの国内企業では正しく行われているとはいえず、システム開発における問題を生じさせる要因ともなってしまっている。どうしてこのような事態が起きてしまっているのか──システム開発全般のコンサルティングなどを手がける豆蔵のシニアコンサルタント、望月信昭氏に話を伺った。
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受入テストはベンダーに "丸投げ" ではダメ
株式会社豆蔵 エンジニアリングソリューション事業部 シニアコンサルタント 望月 信昭 氏 |
望月氏は、現状の国内における受入テストのあり方についての問題点を次のように指摘する。
「本来であれば受入テストはユーザー企業が主体となって、出来上がったシステムが実際の業務プロセスに合致しているか、そもそも元々の要求仕様が妥当なものであったか、などを確認するものです。しかし、日本ではシステム開発を委託するベンダーに、単体テストやシステムテストだけでなく、この受入テストまでも委ねてしまっているケースが多いのです。そのため、本来であれば受入テストの段階で発見すべき、システムと実際の業務との乖離に気づくことができずにカットオーバーに至ってしまい、いざ実業務での使用が始まった途端に多くのトラブルが生じてしまっています。これでは、企業にとって業務遂行上の大きなリスクになりかねません」
受入テストが適切に行われていなかったばかりに本番稼働で発生しがちなトラブルとしては、実際の業務内容がシステムに反映されていないといった典型的なもの以外にも、ある局面になると途端にシステムのパフォーマンスが低下したり、UIまわりがユーザーにとって使いにくいものであることが判明したりなどさまざまなケースが存在する。
「こうしたケースは、本来ユーザー視点で行わねばならない受入テストが、開発側であるベンダー視点で実施されてしまっていることに起因しています。本当の受入テストというのは、ユーザー企業のIT部門のみならず、業務部門のユーザーも参加して行うべきものですので、それをベンダーに任せてしまっていたのでは、うまくいかないことが生じるのもある意味当然なことだと言えるでしょう」
解決策は、テスト技術とテストツールをいかに活用するか
また、ユーザー企業が受入テストを行っていたとしても、やはりトラブルが発生してしまうことも多いという。その理由は、企業側に「どこを確認すればいいのか」、「どのような状態であれば受け入れても良いという判断が下せるのか」──といった事柄への知識やノウハウがないまま、形式上で受入テストを実施してしまっているからである。
では、どうすればユーザー企業は後々にトラブルを生じさせることのない適切な受入テストを行えるようになるのだろうか。この疑問に対して望月氏は次のように応える。
「もちろん大事なのは、ユーザー企業側がしっかりとした受入テストのノウハウを持つことです。ただほとんどの場合、IT部門のスタッフというのはインフラ管理についてはスペシャリストであっても、開発やテストに関するスペシャリストではありません。また、昨今の経営環境から、ほとんどの企業ではITスタッフのリソースに余裕がない状況です。そこで有効な解決策となるのが、テスト技術の活用と、そのために必要となるテストツールを導入することなのです」
テスト技術を受入テストのテストシナリオ作成に適用すれば、テストの網羅性が向上し、結果としてテスト工数を減らすことも可能となる。これによりITスタッフが少ない中で手間を削減することにもつながるのだ。
ここで気になるのが、「テスト技術を取り入れてテストツールを正しく活用するには、どのようにすればいいのか」である。その詳細な内容については、来る6月26日に開催される「ソフトウェア品質サミット」のセッションにおいて、望月氏に実例を踏まえて語っていただく予定である。経営に役立つITを提供する使命を担うITスタッフの方々には、その任務遂行のためにも必見のセッションとなることは間違いないだろう。