日本IBMは6月11日、IT基盤向け新コンピューティング・モデル「Software Defined Environment」(SDE)および、同コンセプトを具現化する構成製品の1つ「IBM Software Defined Network for Virtual Environments VMware Edition」(SDN VE)を発表した。
新コンセプト、3つの効果
日本IBM 専務執行役員 システム製品事業担当 三瓶雅夫氏 |
今回発表されたSDEは、昨年から大きなトレンドとなっているSoftware Defined Network(SDN)と同様、仮想化技術を活用し、物理構成とは切り離してITインフラを柔軟に制御できるようにしようというコンセプトになる。SDNの適用対象はネットワーク環境のみだが、SDEではスコープをIT環境全般にまで広げている。
発表会でSDEについて説明した日本IBM 専務執行役員 システム製品事業担当の三瓶雅夫氏は、SDEがもたらす価値について「Agile」「Efficient」「Open」という3つのキーワードを用いて、以下のように解説した。
- Agile : これまで手作業で実施していたシステム構成を動的かつ自動的に実行し、変化に迅速に対応
- Efficient : 様々なワークロードを無駄なく最適なコンピューター資源に割り当てることにより、ITリソースの効率化を実現するとともに、構築・運用・保守のコストを削減
- Open : ハイブリッド・クラウドの容易な構築とクラウドベンダーによるベンダーロックインからの解放
こうした効果を実現するうえでのポイントとして三瓶氏が挙げたのが、ワークロードの抽象化、リソースの抽象化、およびそれらのマッピングである。
氏はまず、ワークロードに関して、IBMが抱えるワールドワイドの顧客8000社のシステムを分析した結果を紹介。処理パターンや機能要件、非機能要件に基づいて解析すると、大きく「DBトランザクション」「アナリティック」「ビジネス・アプリケーション」「Webコラボレーション」の4種類に分類できたと説明し、SDEにおいても、そういった粒度でワークロードを抽象化することを明かした。
一方、リソースに関しては、コンピューティング(サーバ)、ストレージ、ネットワーク、それぞれの領域に仮想化を適用してリソースをプール化。異種混交のハードウェアを抽象化したうえで、ポリシーに基づき、上記の抽象化されたワークロードへ自動的にマッピングすることで、IT基盤としての俊敏性を高め、運用の手間を削減するという。
さらに三瓶氏は、「SDEでは、チューニングも継続的かつ自律的に行う」と解説。「これまで管理者が経験や勘に基づいて行っていた最適化作業を、インフラを監視しながら自動的に実施することで、ITリソースと運用保守コストの非効率性を排除する」と語り、新技術の優位性を強調した。
オーバーレイ型のSDNソリューション
日本IBM システム製品事業 System x事業部 ビジネス開発の瀧谷貴行氏 |
新コンセプトと併せて発表されたSDN VEは、SDEにおいてネットワークリソースの抽象化を実現するための新製品になる。VMware上で稼働するソフトウェア型の分散仮想スイッチによって構築されるネットワークオーバーレイソリューションだ。
SDN VEについて説明した日本IBM システム製品事業 System x事業部 ビジネス開発の瀧谷貴行氏は、同製品を「IBM初のオーバーレイ型SDN製品」と紹介。さらにオーバーレイ型の特徴として、「OpenFlow対応スイッチで構成されるホップ・バイ・ホップ型と比べると、フロー単位の細かいトラフィック制御が難しい」という短所がある一方で、「既存のネットワーク資産をそのまま活かせる」というメリットがあること強調した。
さらに瀧谷氏は、導入効果について、20台のスイッチと120台のサーバーで構成される環境において、従来型ネットワークとIBM SDN VEを適用した場合とで比較して試算。ディプロイメント時のシステム管理者のタスクは、従来型ネットワークの628が14にまで減るほか、スケーラビリティという点では4094VLAN IDが1600万VNID(リリース当初は16000ドメイン)と4000倍に増えることを紹介。コストに関しては、2880万円かかるものが530万円にまで抑えられると解説した。