新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と半導体デバイスベンダなどで構成される超低電圧デバイス技術研究組合は6月10日、新しいトランジスタ構造を用いた駆動電圧0.37Vの集積回路を開発したほか、従来の電荷保持型ではなく、低電圧でのデータ記憶を可能とする抵抗変化型不揮発デバイス(メモリ)を開発したことを発表した。

同成果の詳細は、6月11日(火)から京都で開催される「2013 Symposium on VLSI Technology」にて発表される予定。

具体的に今回開発された技術は、集積回路側は、薄膜BOX-SOI(SOTB)を用いた独自の低バラつきトランジスタを開発し、バラつきの影響を受けやすいSRAM(2Mビット)において0.37V動作を実証した。

一方のメモリ側は、再構成LSIへの適用を目指した金属原子移動型スイッチについて、酸化タンタルからなるダイオードを3端子原子移動型スイッチの選択素子として用いることで、原子移動型スイッチの小型化に道筋を得たほか、STT-MRAMのデータ保持を担うMTJ(Magnetic Tunnel Junction)に新たな構造を適用することで、微細化の障害となるSTT-MRAMの製造バラつきの影響を低減(動作マージン拡大)、直径35nmのメモリ素子の試作・評価で、安定した低電圧動作を確認したとする。

また、4値/セルの多値メモリの製造容易性を目指して、2つのメモリ素子を積層してそれを一括エッチングで加工するメモリ構造と製造プロセスを開発。試作・評価を行った結果、0.5V以下の低電圧下において4値動作を確認したという。

さらに、結晶構造の変化でデータを保持する相変化デバイスにおいて、GeTe/Sb2Te3超格子結晶膜の電子注入による動作機構を見出したほか、バラつきの少ないGeTe/Sb2Te3超格子膜を得ることで、従来の相変化デバイスと比較して1/2以下の電圧と1/3以下の電流での動作が可能であることを実証したという。

今回開発された各種技術の概要

これらの技術を活用することで、消費電力が従来よりも1桁以上小さなLSIの製造が可能となり、電池1本でも長期間動作できる機器や、電池を持たない環境発電を活用した機器などの実現への道筋が立てられるようになると研究グループでは説明しており、今後、今回開発された各要素技術の集積化および信頼性に関する検証を進めることで、それぞれのデバイスの特徴を活かした、実用化を目指す実証開発を進めていく計画としている。

超低電圧デバイスの目指す新しい領域