芝浦工業大学は、特殊な金属代謝機能をもつ微生物を用いて工業廃水に含まれるレアメタルを回収する技術を開発し、レアメタル汚染への対応と、回収したレアメタルを市場価値のある資源としてリサイクルすることを可能にする技術を開発したと発表した。
同成果は同大 応用化学科の山下光雄 教授、堀池巧 研究員らによるもの。詳細は、5月16~17日に行われた経済産業省資源エネルギー庁、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が主催する国際資源ビジネスサミット「J-SUMIT」にて発表された。
希少金属レアメタルの1つであるセレンは、太陽光パネルやガラスの着脱色剤として利用されているが、水に溶けると毒性を示し、それが体内に入ることで神経障害や脱毛を引き起こすこともある毒劇物だ。また、従来のセレンを含んだ工業廃水の処理は、セレンを凝集するにも多量の化学薬品を使う必要があり、多大な費用が必要となっており、より効率的な廃水処理技術の確立、ならびに廃水からセレン元素を回収する技術の確立が求められていた。
今回、研究チームは、泥中や川などの自然界に存在する微生物を用いて、工業廃水中のセレンを回収する技術を確立したという。具体的には、水に溶けた毒性のセレンを不溶化し、無毒のセレンに還元することのできる好気的セレン酸塩還元菌Pseudomonas stutzeri NT-I株を発見。
同株は、工業廃水中で培養することで、水に溶けていた毒性のセレン酸・亜セレン酸が変化して元素態のセレン(固化物)になる性質を持っており、固液分離することで、セレンが固体として濃縮された形で取り出せ、焼成(焙焼)により、酸化物セレンとして再資源化を実現したという。
また、セレンのみならず、テルルや自動車モーターの永久磁石などに使用されるネオジム、ジスプロシウムなども同様の方法での回収実験に成功しているとのことで、現在、産業への利用を検討しているとおり、今後は、回収可能な元素を拡大していく研究を進め、希少金属のさらなる回収を目指すとしている。