Analog Devices(ADI)は、高性能トランスミッタやレシーバ向けにRF/マイクロ波帯用IC「ADL6010/ADRF6620/ADRF6518」3品種を発表した。
同製品は、ワイヤレスインフラ、防衛システム、産業機器、ポイントtoポイントマイクロ波帯無線機器などの高いダイナミックレンジが要求されるアプリケーションに最適となっている。これらのRF/マイクロ波帯用ICは、アンテナからデジタルデータ、またその逆という、あらゆるシグナルチェーンをカバーできるもので、1000品種を超える同社のRF IC製品群をさらに拡張するものとなっている。
マイクロ波帯用パワー・ディテクタ「ADL6010」は、独自の広帯域電力検出技術を活用したもので、広い温度範囲にわたって、これまでにない直線性と安定性を実現している。信号源負荷による歪みを除去できる独自のリニアライゼーション(直線化)方式を採用することで高精度が実現されており、-40℃~+85℃の温度範囲で誤差±0.5dBまで改善されている。また、500MHz~40GHzの広い周波数範囲で高精度特性を維持しており、50Ωの入力インピーダンス、-30dBm~+15dBmの入力電力レンジを有する。この特徴から、信号の一部を低結合度のカプラで抽出するアプリケーションに最適となっている。
「ADRF6620」は、高性能デジタルプリディストーション(DPD)用レシーバ向けに開発され、700MHz~2.7GHzの広帯域フラクショナルNシンセサイザ、アクティブミキサ、高ダイナミックレンジのデジタルVGA(可変ゲインアンプ)、RF DSA(デジタルステップアッテネータ)、4:1(SP4T)RF入力スイッチ、RFバラン、LDO(ロードロップアウトレギュレータ)が集積されている。「ADRF6620」を活用することで、ローノイズかつ高い直線性という優れた性能を維持しながら、部材コストを削減することができる。4:1 RF入力スイッチをMIMO(Multiple Input and Multiple Output:複数アンテナを用いて無線通信の性能を向上させる技術)インフラストラクチャアプリケーションのDPDレシーバで最適に活用できる。OIP3はRF入力からDGA(デジタルVGA)出力まで最大+44dBmで、高いリニアリティ性能が要求されるUMTS、LTE-A、MC-GSMなどのDPD用途に最適となっている。
「ADRF6518」は、広い帯域幅のマイクロ波帯ポイントtoポイントレシーバ向けに新しく開発された。63MHzのプログラマブルローパスフィルタとパワーディテクタを2個ずつ内蔵しており、高ダイナミックレンジかつローノイズを特徴とする、2チャネルベースバンド用VGAとなっている。同デバイスは、これまでディスクリート回路で構成していたフィルタやアンプを、帯域幅やゲインをプログラム可能な高集積デバイスに置き換えることができ、部材コストを削減できる。また、優れたチャネル間マッチングと柔軟性の高いゲインコントロールが特徴で、最大112MHzのチャネル帯域幅のレシーバに利用でき、最大1GHzのチャネル帯域幅のEバンド用レシーバにも用いることができる。同VGAは、希望波を適切に増幅、帯域外の干渉波を適切に除去できるので、A/Dコンバータ(ADC)に要求される帯域幅やダイナミックレンジ要件を緩和することができる。
なお、パッケージは「ADL6010」が2mm×2mm角の6ピンLFCSP、「ADRF6620」が7mm角の48ピンLFCSP、「ADRF6518」が5mm角の32ピンLFCSP。価格は1000個受注時で、「ADL6010」が15.33ドル、「ADRF6620」が12.95ドル、「ADRF6518」が11.95ドル。現在サンプル出荷中で、量産は2013年夏を予定している。