三菱重工業とネクスは6月5日、電力線通信(Power-Line Communication:PLC)を用いてロボットの省配線化に成功し、実用化に着手したと発表した。これにより、ロボットアームに這わせていた太い電力・信号線を省いて、ロボットの操作性の大幅な改善を実現できるという。

今回の省配線化は、三菱重工が製作したロボットに、ネクスが開発した高速信号伝送デバイスを組み合わせ、さらに、電力を伝送しながら外部雑音の影響や信号の歪みを抑制する新技術を共同で開発したことにより実現した。

図1 PLC適用による省配線化

図2 PLCモジュール

FAや災害収束支援などに用いられるロボットは、その先端にハンドやセンサ、カメラなどの各種工具が接続されているが、これらを遠隔操作するためには、先端工具に必要な電力を供給するとともに、監視制御信号を伝送する必要がある。このため、ロボットアームの外側に配線する電力・信号線が太くなり、ロボット操作の妨げになっていた。

今回、両社が開発した新しいPLCによる省配線化技術は、細い通信線1対で、大電力供給と高品質かつ高速の信号伝送を両立させるもので、ロボットアームに太い電力・信号線を這わせる必要がなくなるため、ロボットの操作性を改善することが可能だ。

これまでも、電力供給と情報伝送とを両立させる手段はあり、代表的なものとして、イーサネット配線によるPoE(Power over Ethernet)と呼ばれるものがあるが、適用対象が小電力機器に限られており、ロボットに使うことはできなかった。また、市販のPLCでは、大電力供給と劣悪環境下での高速信号伝送は両立しない。今回の省配線化技術はこれらの問題を解決し、ロボットへの適用を実現した。

今回の省配線化技術(共同特許出願中)は、FAやクルマ製造などの産業用ロボット分野のみならず、災害収束支援など特殊ロボット分野などにも展開可能な技術という。省配線化の実現により、複雑で狭い作業エリアでの組み立て作業などや、ノイジーで障害物の多い災害収束作業などにおいても、スムーズな作業を実現する。両社は今後も、システムビジネス分野やPLCモジュールビジネス分野などにおいて同技術に磨きかけ、多様な市場のニーズに応えていく方針としている。

図3 今回開発したロボットのシステム構築例

図4 梯子式作業車への適用例

表1 ロボットの電力供給・情報伝送手段比較