ジャパンディスプレイは6月3日、茂原工場(千葉県)内に新設した低温poly-Si(LTPS) TFT-LCDラインでの量産を開始し、稼動式を開催した。

同ラインは、第6世代(G6:1500mm×1850mm)のガラス基板を使用する。LTPS TFT-LCDを生産するラインでは、世界最大クラスとなっている。最新設備を導入することで、400ppiクラスのハイエンドのスマートフォンやタブレットに向けた高性能、高精細、高品質なディスプレイを生産していく。

スマートフォン向けディスプレイでは、5型フルHD(1920×1080画素)クラスまで大型化、高精細化が進んでいる。ジャパンディスプレイでは、この需要に対応していくとともに、茂原工場のG6ラインで製造されるディスプレイでは、タブレット向けでの大型受注を期待していると見られる。タブレット向けの7~11型クラスの領域でLTPS TFT-LCDを採用した製品はまだ存在しない。しかし、さらに高精細化を進めるためには、LTPS技術が求められてくるのではないかと同社では見ている。

稼働を開始したG6ラインの茂原工場

稼動式には、ジャパンディスプレイ 社長の大塚周一氏をはじめ、千葉県知事 森田健作氏、茂原市長の田中豊彦氏などが列席した。まず、大塚氏が挨拶に立ち、「昨年6月の工事開始から347日で立ち上げた。これだけの短時間で量産を立ち上げられたのは、日立ディスプレイズ、ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイの旧3社が一体となって取り組んだ成果と言える。スマートフォンやタブレットなど急成長している市場では、日本メーカーが"技術で勝って、ビジネスでは負ける"という構図が続いている。何故、ビジネスで勝てないのかというと、旧親会社の資金的な問題があった。スマートフォンやタブレットなどが大きく成長している。これらは、一旦商談が決まると莫大な受注量となるが、これを受け入れることができなかった。今回、産業革新機構から2000億円の資金提供を受けて、その大半を茂原工場に投資した。会社が発足して、最初の大型投資案件を実行できたことは非常に感慨深い」と同工場への思いを述べた。

挨拶をする社長の大塚周一氏

千葉県知事 森田健作氏が挨拶。「ジャパンディスプレイは千葉県を代表する企業。できる限りの協力をしていく」と熱弁を振るった

同ラインの立ち上げまでの過程は以下の通り。

  • 2012年4月16日、パナソニック液晶ディスプレイのTV用液晶ラインを取得
  • 2012年6月20日、TV用LCDラインの解体・撤去を開始
  • 2012年8月27日、建屋および用役設備の改造を開始
  • 2012年12月4日、設備搬入・設備立ち上げを開始
  • 2012年12月21日、製品の試作を開始
  • 2013年6月3日、量産開始

とたった1年余りで立ち上げた。

社長と来賓者による稼動式。ボタンを押して製造がスタートした

稼働を記念した植樹の模様

1500mm×1850mmサイズのG6ガラス基板。LTPSラインでは世界最大クラスとなる

月産約2万4000シート体制で立ち上げ、来年には同約5万シート体制を目指して整備を図る。設備投資額は約2000億円を予定している。クリーンルームは3階構造、建屋面積は約20万1000m2。第1フェーズの2万4000シートはクリーンルーム3階部分に新設された。第2フェーズ以降は1~2階に設置される計画。稼動式に合わせて、新設されたTFT製造のリソグラフィ工程の一部が公開された。

リソグラフィ工程の露光装置

露光装置が手前に並び、その奥にコータ&デベロッパが並ぶ。さらに、搬送用のカセットがある。処理前後の基板が搬送されると見られる。

稼動式の会場には、先日発表された5.2型有機ELディスプレイをはじめ、同社の製品が展示された。

5.2型有機ELディスプレイ

5型フルHD対応の超薄型LTPS TFT-LCD