富士通研究所は6月4日、GaN HEMT(高電子移動度トランジスタ)を用いて、ミリ波帯まで適用可能な、10W出力の送受信モジュール技術を開発したと発表した。
同成果の詳細は、6月2日より米国シアトルにて開催されているマイクロ波の国際学会「IEEE MTT 2013 International Microwave Symposium(IMS2013)」にて発表された。
ネットワーク社会の進展により、無線システムの増加ならびにそれに伴う電波需要は今後、さらに進むことが見込まれており、割り当て周波数のひっ迫が問題になりつつある。また、レーダーでは、高周波になるほど、物体を精密に測定できることから、すでに航空機では10GHz帯を利用したものが採用されているが、今後はさらに高い周波数へとシフトしていくことが考えられている。
こうした中、現在のミリ波帯の高出力送受信モジュールは送信部と受信部ごとにパッケージ化されており、小型化が難しいかった。また、ミリ波帯通信やレーダーを実現するために必須となる送受信モジュールには、ミリ波帯まで動作する広帯域特性と、広いエリアをカバーするための高出力特性が求められており、10Wクラスの高出力の送受信モジュールを実現するためには、高出力であればあるほど発熱する送受信モジュールの放熱性を向上することが重要となるほか、送受信モジュールでは高い周波数において信号を伝送する配線とチップとの接続部分で損失が大きくなるため、接続部分の損失を低減することも必要となっていた。
そこで今回、研究チームは、GaN HEMTをベースに高出力化に伴う発熱を効率よく逃がすヒートシンク埋め込み構造を開発し、多層セラミックス基板の送受信モジュール内に作り込むことに成功。これにより、放熱性が従来に比べ5倍に向上し、10Wクラスの出力を扱うことが可能となったという。
また、ヒートシンク部の高周波での損失を低減する広帯域接続構造を考案。これにより、モジュール内を伝わる高周波の信号を、従来に比べ2倍の周波数40GHzまで伝送することを可能としたという。
さらに、これらを組み合わせることで、ミリ波帯に対応した送受信モジュールを1パッケージ化、サイズも従来パッケージの組み合わせに比べ1/20以下となる12mm×36mm×3.3mmに小型化することに成功したとい。
なお同社では今後、どう技術を、広帯域にわたって高出力で小型化が要求される無線機器やレーダーなどに幅広く適用していく予定としている。