大日本印刷(DNP)は6月3日、ノートPCやタブレットの製造受託大手の台湾Quanta Computerとカラーマネジメント用LSIの共同開発に関して、業務提携を締結したと発表した。
近年、PCやタブレット、スマートフォンなどに、商品カタログや飲食店のメニューなどを表示してサービスに利用する機会が増加している。しかし、これらの電子機器で表示する画像の色調は、ディスプレイメーカーや機器ごとに違いが生じている。例えば、通販サイトの商品やロゴマークなどに機器間での色のバラつきによる実物の色調との差異があると、返品の発生やブランドイメージの低下などの恐れが生じるため、より実物に近づけた美しい映像表現が可能な機器が求められている。
こうしたニーズに対応すべく、印刷物のカラーマッチング技術で豊富なノウハウを持つDNPと、ノートPCなどの製造受託を展開するQuantaは、色調補正機能およびコントラスト補正によって低消費電力ながらリアルで美しい映像表現を実現する専用LSIを共同開発することになった。
カラーマネジメント用LSIの特徴は3つ。1つ目は、カラーマネジメント機能。DNPの印刷における画像処理で培ったカラーマッチング技術を活用して、PCとタブレットに表示される画像をより実物に近い色調に補正が可能。また、機器の違いによるディスプレイ上の色調のバラつきを最小限に抑え、機器や端末の信頼性を高めることができる。
2つ目は、コントラスト補正機能によって美しくリアルな映像表現を低消費電力で実現したこと。同LSIは、人間の網膜と同じように、同一画面内の明るい部分と暗い部分を認識し、適切なコントラストに補正する英国Apical社の技術に加え、画像内のノイズを除去するDNP独自の機能を搭載している。同LSIにより、画像の明暗部を適切なコントラストに補正する機能によって視認性が向上し、リアルで美しい映像表現が可能になる。同時に、ディスプレイのバックライトの輝度を30%まで下げても、最大出力時と同等の画質を表現できるため、低消費電力化を実現する。
3つ目は、ブルーライトカット機能。LCD特有のブルーライトをカットする機能を搭載しており、眼に優しい電子機器の開発できるという。
今後、DNPはLSIの開発・製造およびQuantaへの提供、同LSIを搭載した各種機器の色調整のサポートなどを、Quantaは同LSIを搭載したタブレットやノートPCの開発・製造、および顧客企業への販売などをそれぞれ担当する。
Quantaは顧客企業に対して、同LSIだけでなく、DNPの顧客企業が持つ多様なコンテンツやサービスなどのソフトウェアも搭載した、付加価値の高いノートPCやタブレットを製造・販売していく考え。DNPは、同LSI搭載機器に業務改善や教育支援、販促支援などのDNPオリジナルのアプリケーションを付加して販売していくことで、両社の連携をさらに強化していく方針。
同LSIは、2013年下期にDNPが回路を設計した後、製造を開始する。Quantaは同LSIを搭載したノートPCやタブレットの量産を2014年1月に開始する予定。今回の業務提携により、DNPは2014年度に50億円の売上を目指すという。