5月28日、セールスフォース・ドットコムは「Customer Company Tour 東京」を開催した。4月に福岡でスタートし、名古屋、大阪に続くもので、東京が最終日となる。当日はSalesforce.comの会長兼CEOであるマーク・ベニオフ氏が登壇。ユーザー企業からのコメントや機能のデモンストレーションなども含んだ基調講演が行われた。

Salesforce.com 会長兼CEO マーク・ベニオフ氏

講演内では、列席したユーザー企業の代表者がコメントを求められるシーンがたびたびあった。センターに円形の場を設けてはいるものの、参加者の間を練り歩きながら呼びかけるように語るスタイルをとっていることもあり、一方的にベニオフ氏が語るというよりも、参加者やユーザーを巻き込んだようなスタイルをとっていたのが印象的だ。

顧客の声を重視するカスタマーカンパニーを目指す

ベニオフ氏は冒頭で「みなさんからのフィードバックをいただきたいというのが私たちの一番大きな目的。みなさんが何を言うのかを聞きたい。今日は話をしに来たのではなく、みなさんの声を聞きに来た」と発言。TwitterやFaceBook、メールで自分へのコンタクトが容易に行えることを講演の中で繰り返し強調した。

同氏は、顧客の声をこれまでも重視してきたとした上で「お客様とつながった、お客様が主導する、顧客が満足にこだわる、顧客を中心に据え、顧客に信頼される企業にならなければいけない。それがカスタマーカンパニーになるということだ」とも語った。

消費者は選択する自由を持っており、ソーシャルメディアを通じて広く発言する力も持っている。消費者の声を重視するカスタマーカンパニーであることが求められており、そうでなければならないのだと語られた。

また、ベニオフ氏はすべての物がインターネットに接続しており、その接続が有線接続ではなく3G、4Gといったワイヤレス接続でモバイルツールが使われるようになった今、カスタマー革命が起こっているという。そして、カスタマー革命を構成するものとして、ソーシャル、モバイル、ビッグデータ、コミュニティ、アプリケーション、クラウド、トラストの各分野について革命が起こっていると解説した。

Salesforce.comの提唱する「カスタマー革命」

ソーシャル革命

ビッグデータ革命

コミュニティ革命

クラウド革命

中小企業の経営支援と情報共有に中小企業庁が採用

セールスフォース・ドットコムの中小企業に対するコミットメントとしては、経済産業省 中小企業庁が中小企業の経営支援と情報共有のためにSalesforce Chatterを採用したことが紹介された。2016年までに100万者が参加するネットワークを構築することを目標としているという。

経済産業省 中小企業庁事業環境部長 鍛冶克彦氏

この取り組みについては経済産業省 中小企業庁事業環境部長の鍛冶克彦氏が登壇し「日本の中小企業は減少しており、企業数も米国の半分。手続きや補助金の利用方法がわからない、ビジネスパートナーとのマッチングができないという問題がある」とした上で、それを解決する手段としてクラウドを活用、7月にスタートすると語った。経営者のコミュニティ創世やビジネスマッチングを実現する予定だという。

「日本の製造業、下請け企業の技術を活かせば航空宇宙や医療機器に出て行けるが、ビジネスマッチングができていない。そういうアウトリーチをするファンクションをクラウドシステムで提供できるのではないか。また女性経営者のためのスモールで身近なコミュニティを構築したい。日本の中小企業が下手なファイナンシャルマネジメントについても、有用なファンクションがクラウドで提供してもらえるのではないかと考えている」と鍛冶氏は語った。

セールスフォース・ドットコムの中小企業に対するコミットメント

カスタマーカンパニーを実現するための5つの問い

ベニオフ氏は「カスタマーカンパニーを実現するための5つの問い」を提示。「さまざまな場所にいる顧客にマーケティングを展開するには?」、「顧客と連携しながらチームで営業を進めるには?」、「さまざまな場所にいる顧客にサービスを提供するには?」、「カスタマープラットフォームを構築するには?」、「ワークスタイルを変革するには?」という5つの設問について、企業は自問すべきであると語られた。

カスタマーカンパニーを実現するための5つの問い

さまざまな場所にいる顧客にマーケティングを展開するには?

顧客と連携しながらチームで営業を進めるには?

さまざまな場所にいる顧客にサービスを提供するには?

さまざまな場所にいる顧客にサービスを提供するには?

カスタマープラットフォームを構築するには?

各課題の解決事例として、Salesforce.comの提供するMarketingCloudやChatter、SalesCloudといった各種ツールを利用した事例を動画で紹介。最新の機能やForce.comによる開発環境などについてはデモンストレーションも行われた。

最新事例ユーザーとして2社が登壇

オリックス野球クラブ 取締役事業本部長兼企画事業部長 湊通夫氏

最新事例のユーザーとして、講演中でオリックス野球クラブ 取締役事業本部長兼企画事業部長の湊通夫氏と、トヨタカローラ徳島 代表取締役社長の北島義貴氏が登壇した。

オリックス野球クラブでは、ファンとのコミュニケーションやファンの属性分析などにSNSを活用している。ファンと選手のダイレクトな交流を実現しているほか、グッズ購入傾向や利用額、観戦歴などを分析しているという。

「ホームページと対極的なのがSNS。ホームページが1対多であるのに対して、SNSは1対1。1番のコミュニケーションは球場に来てもらうことだが、それを補完しなければならない。ファンがどういうことを考えているのかが重要。球団だけで考えて発信していると独善的になっていくため、修正するためにセールスフォースのようなものが必要で、これからどんどん重要になってくる」と湊氏は語った。

トヨタカローラ徳島 代表取締役社長 北島義貴氏

トヨタカローラ徳島では、タブレットを利用して営業活動の効率化と顧客満足度向上に取り組んでいるという。

「ディーラーは商品力で発展してきたが、マーケットがシュリンクして行く中でOne to Oneの関係が求められている。それをきちんと見られるようになり、なおかつアプリケーションを使うことでスタッフが成功体験できるのがセールスフォースを通じて実感できている」とした北島氏は「ディーラーはモノではなくコトの提供ができるビジネス。お客様のハートの部分も含めて満足していただけるブランドを作りたい」とも語った。