JVCケンウッドは5月29日、国際標準化団体のITUとISO/IECが共同で規格化作業を進めてきた次世代映像符号化方式「HEVC(High Efficiency Video Coding):(ISO/IEC MPEG-H Part2/ITU-T H.265)」の最終ドラフトが確定し、2013年夏頃に正式国際標準規格として発行される見通しとなったこと、ならびに同社が開発した各種要素技術がHEVCの重要な技術として採用されたことを明らかにした。
HEVCは、現行の「AVC(Advanced Video Coding):(ISO/IEC MPEG-4 Part10/ITU-T H.264)」と比較して、約半分程度の情報量で同等以上の品質の映像コンテンツを再現できる符号化方式で、モバイル端末へのハイビジョン映像配信や、4Kや8Kといった従来のハイビジョンを超える高精細映像コンテンツの放送、配信、伝送などのサービスの活用に期待されている。
今回、同社がHEVCの構成要素として提案した映像符号化技術は主に3つ。1つ目は「低負荷高効率な動き情報符号化技術」で、圧縮効率を向上させるための適応的な動き情報符号化手法の導入により、演算量が大きくなるが、動き情報を導出する際に参照するブロックの位置と優先順位を最適化することで、演算量の少ない高効率な動き情報符号化を実現したとする。
2つ目は、「直交変換の係数符号化の高速化技術」。係数符号化では、利用される圧縮率を高めるため周辺情報が利用されるが、高いビットレートの符号化で処理時間が大きくなることから、周辺情報の一括取得技術を導入することで、係数符号化の並列処理を可能とし、処理時間の短縮を容易にしたという。
そして3つ目は「参照メモリアクセス量の抑制技術」。高精細画像の符号化では、予測ブロックを小さくすると参照メモリのアクセス量が増大するが、フレーム間予測において、メモリアクセス量が大きい双方向予測を単方向予測に変換することで、ハイビジョンを超える高精細画像(4Kや8Kなど)のコーデックの実現を容易にしたとしている。
なお、同社では今後、これらの技術をさらに発展させるとともに、HEVC標準化で培った技術を用いて、業務用および民生用画像装置(カメラ・無線機器など)の高機能化や、よりコンパクトなネットワーク配信に応用展開を図っていきたいとしている。