安川電機は5月27日、鹿児島大学の協力を得て、脳卒中による後遺症で麻痺した上肢の回復を早めることを目的とした、「促通反復療法(川平法)」を実践できるロボット技術を応用したリハビリ装置「上肢リーチング訓練装置」を共同開発したことを発表した。
現在、日本では年間約30万人が脳卒中を発症しており、総患者数は300万人と推定されている。多くの患者には片麻痺などの障害が残り、その回復には療法士などによる長期間のリハビリが必要だ。また、発症後半年を経過するとそれ以上の回復が困難といわれている。
鹿児島大大学院 医歯学総合研究科 リハビリテーション医学分野の前教授である川平和美博士によって開発された促通反復療法が、脳卒中片麻痺患者の麻痺回復に優れた効果を示し、かつ発症後数年経った場合でも効果があることがわかってきた。
しかし、複数の刺激を与えながら麻痺部位の運動を行わせるという促通反復療法の手技は熟練を要するため、習得した療法士はまだ少なく、同療法の治療を受けられる患者は少数に留まっているのが現状における課題だ。
そうした背景から、安川電機は鹿児島大の促通反復療法の研究グループと共同研究を行い、同社のモーションコントロール技術やロボット技術を応用した促通反復療法に基づくリハビリ装置(上肢、前腕、指、下肢、歩行用など)の開発を進めている。今回、その共同開発の最初の成果として、上肢リーチング訓練装置が発表されたというわけだ。
同装置により、促通反復療法によるリーチング訓練(日常生活で大切な手を前上方の目標に伸ばす訓練)を多数回、かつ長時間行うことが可能となり、麻痺した上肢の回復を早めることが期待されると共に療法士の負担を減らすことが可能となる。
なお安川電機では、同社創立100周年に向けて掲げた「2015年ビジョン」実現のための最終ステップとして、新中期経営計画「Realize100」(2013年度~2015年度)を、4月18日に発表した。その中で新規事業の創出・コア事業化の実現に向け、ロボティクスヒューマンアシスト事業領域では、医療・福祉分野において脳疾患などのリハビリ機器への取り組みを進めることとしており、促通反復療法(川平法)のリハビリ装置は、その主要な柱の1つとの位置付けているという。
今後、本装置の実用化・普及に向け、臨床研究を継続して治療効果を示すエビデンスを収集すると共に、改良を行って2015年に製品化する予定としている。また、ほかの部位や内容(前腕、指、下肢、歩行など)の訓練装置についても、鹿児島大学との共同研究が進められており、順次、臨床研究を経て製品化を行うとした。