「会計ソフト」と一口でいっても、市場にあるパッケージ製品から、クラウドサービスまで多種多様。その中で、自分に最適な会計ソフトをチョイスするのは大変だ。そこで今回は、代表的な会計ソフトと新しく登場しているクラウドサービスの機能比較を行ってみた。

会計作業は何が大変なのか

会社を運営していく上で、会計作業は欠かせない。特に個人事業者や中小企業においては、経理担当者が経営者自身ということも少なくないはずだ。そんな兼任状態で経理を行っていると、帳票類にいちいち書き込むという旧来のやり方では、まったく作業がはかどらない。そこで、多くの事業者が考えるのが「会計ソフト」を使った経理処理となる。

実は会計ソフトにも機能に違いがあり、多忙な業務の合間を縫って入力作業を行うには、自社のスタイルにあったソフトウェアを見つける必要がある。一般的な感覚で大きく分類すると、多機能で使いやすいユーザーインタフェースを持っているパッケージ製品と、最小限の機能が揃っているクラウドサービスがある。

「やよいの青色会計13」のメイン画面

「みんなの青色申告14」のメイン画面

クラウド型会計ソフト「freee」のメイン画面

ちなみに、どちらが使いやすいかという部分では、個人の使い方や経理知識に依存するので、これが直接"会計ソフトの優劣"に繋がるわけではない。いずれにしても、いくら会計ソフトを導入したからといっても、経理処理が溜まってしまえば、入力作業が面倒になるうえ、時間もかかってしまうのだ。

そんなことは分かっている、という声も聞こえてくるが、実際には日々の仕事に追われ、気が付くと2、3カ月分の経理処理が溜まってしまう、ということもある。中でも、とりわけ溜めると面倒なのが、やたらに明細が多くなってしまう銀行口座の管理だ。

経理処理の中でもひときわ面倒なのが銀行口座における取引の管理。取引先がたくさんあると、通帳もあっという間に埋まっていく

オンラインバンク機能に注目してみる

銀行口座の取引を管理するには通帳記帳が必要だ。特に取引先が多い業種では、あっという間に通帳が埋まってしまうこともあるだろう。それほど取り引き先がないにしても、月に数回は銀行へ赴き、記帳をしたり、入出金を依頼したりという作業が必ず発生する。

こういった面倒な作業を回避するには、オンラインバンキングを使用するのが一番だ。口座の管理が、事務所にいながら行える。銀行によってもできることは多少違ってくるが、どのサービスも一般的な経理に必要な操作は、ほぼ可能だと思っていいだろう。

オンラインバンキングから取り込んだ銀行口座の明細

オンラインバンキングを利用すれば、長時間待たされる時間的損失などから開放されるというわけだ。単純に経理処理という側面だけで考えても大きなメリットとなるのでぜひオススメしておきたいが、実は銀行のオンラインバンキングは会計ソフトと連動して使用することによって、さらに強力なアイテムになってくれるのをご存知だろうか。

例えば、オンラインバンキングからCSV形式等で入出金データをダウンロードして、それを会計ソフトに取り込むといったシンプルな使い方もあれば、サービスと連携して自動で更新してくれるものまで、ソフトによってさまざまな機能がある。代表的な会計ソフトのオンラインバンキング連携をはじめとした機能比較を行ったのが下の表だ。

会計ソフトの機能比較

社名/製品名 弥生株式会社
やよいの青色申告13
ソリマチ株式会社
みんなの青色申告14
CFO株式会社
freee
特徴 シェアNo.1で、初心者でも使いやすい会計ソフト。対応銀行も多く、その点も安心できる。クレジットカード非対応な点や、他と比べて更新に掛かる費用が高め コストパフォーマンスの高いパッケージ型の会計ソフト。銀行連携は対応数が少ないのが残念 クラウド型の会計ソフト。ネット接続とブラウザ(※Google chrome推奨)があればどこでも会計ソフトが扱えるのは大きなメリット。機能が少ないため、将来的に不安を感じる要素もある
取引入力 入力サポート
簿記の知識がなくても、取引例を選ぶことで帳簿が作成できる。仕訳に迷うこともなく、手際よく取引の記録ができる

簿記の知識がなくても、取引例を選ぶことで帳簿が作成できる。仕訳に迷うこともなく、手際よく取引の記録ができる

現金取引などの場合は、自身で取引を入力。この場合は、勘定科目による入力となる
金融明細取込み
・銀行(個人口座 43行、法人口座 11行)
金融機関のIDやパスワードはサーバ上に持たないので、セキュリティが高い。

・銀行 1行(ジャパンネット銀行)
・クレカ 2社
・信金 約140(※法人向けネットバンキングのみCSV連携)

・銀行(個人口座 8行、法人口座 4行)
・クレカ 9社
金融機関のID/パスワードもサーバーで保存。
・自動で同期可能
決算・申告
手順に沿って入力していくと、確定申告に必要な書類が全て作成できる

確定申告に必要な書類が全て作成できる

決算書のみ作成できる。そのほかは自分で作成する必要がある
サポート内容
あんしん保守サポート
・メール/FAQ/電話
・その他業務相談サービス(確定申告相談、仕訳相談など)あり
※価格帯の異なる3つのプランがある

バリューサポート
・電話/メール/FAX/FAQ

・メール/FAQ
価格 ・製品 10,500円 ・製品 10,500円 ・個人事業主980円/月(11,760円/年)
・法人1980円/月(23,760円/年)
・あんしん保守サポート(セルフプラン)9,450円/年 ・バリューサポート 6,300円/年
キャンペーン ・サポート契約年初度無料 ・サポート契約年初度無料 ・2013年7月末まで全プラン無料

各会計ソフトウェアで金融機関機能はどうなっているか?

上記の簡易比較をご覧頂くと分かると思うが、オンラインバンキングとの連携機能にはかなりの差がある。まったく対応していないものもあれば、「freee」というクラウド型の会計ソフトのように対応銀行は少ないものの自動同期機能が搭載されているのもある。

また、パッケージ製品においても、オンラインバンク連携機能はあるものの、対応銀行が少ないものなど、それぞれに大きな違いがあるのだ。

この対応銀行数の違いは、人によってはかなり大きな影響を受けることも考えられる。大手都市銀行に口座があれば、連携機能が使える確率は高くなるが、例えば地方銀行をメインバンクとしているような場合は、せっかくの機能が使えない可能性も出てくる。逆に、対応銀行は少ないものの、法人向けネットバンキングが前提となるが信用金庫やクレジットカードに対応している「みんなの青色申告14」は業種や業務形態によっては有利だろう。

こうして考えていくと、オンラインバンクや金融サービスにどこまで対応しているかも、ソフトウェア選択のひとつの要因として考えておいた方が良いことが分かる。この中でも目立つのが、43行(法人11行)に対応している「やよいの青色申告13」だ。対応金融機関が多いこともそうだが、オンラインバンキングに利用するIDやパスワードを利用しているPC内に暗号化された状態で保存している点も特長。サーバに情報を預ける事も無いので、セキュリティ対策としては非常に安心だ。また、明細が取り込めることで、入力作業は必要なく仕訳変換の手間も考えなくて済むのは大きなメリットといえるだろう。

「やよいの青色申告13」の機能「MoneyLook for 弥生」で、同サービスとの連携も行える

「freee」の口座管理画面

ただし、これはすべてのソフトウェアにいえることだが、当然のように使っている銀行のオンラインバンク口座がすでにあることが前提となる。

機能や金融機関対応においてパッケージ製品にメリット

オンラインバンク機能を使いこなせれば、経理業務がずいぶんと楽になることは確かだ。その恩恵を受けるには、様々なソフトウェアが持っているオンラインバンク機能を比較し、自分の業務にどれぐらい合っているかを十分検討しておく必要があることは十分ご理解いただけたかと思う。

また、会計ソフトを導入する前には分かりづらいかもしれないが、例えば「やよいの青色申告13」であれば、オンラインバンキングに関するものはもちろん、仕訳や申告書の書き方などについてサポートが受けられる。選択の際には、こうしたサポート体制も検討する必要があるだろう。

会計に明るくなくてもサポートが充実していればソフトウェアの活用に不安を感じることはない

会計ソフトと一口にいっても、このように機能や使い勝手の面で、個性はかなりはっきりと感じることができた。中でも、オンラインバンク連携では「やよいの青色申告13」が優勢に見える。もちろん、各企業によって業務形態は違うので何ともいえないが、対応銀行の多さや機能としての使い勝手の良さが目立つ。

ただし、すべての会計ソフトに言えることだが、オンラインバンク機能については仕訳のやり方や、現金の入出金の扱い方など、使いやすさにバラツキがあるという印象がある。個人の好みや慣れ親しんだ入力方法などにもよると思われるので一概に良い悪いは判断できないが、細かい部分作り込みなどを含めて、今後のサービス拡充には大いに期待したい。

会計ソフトを導入するのであれば、十分下調べしておくと、後で後悔することは少なくなる。筆者のように日々仕事に追われて、入力作業もままならないような人は特にこの辺りの見極めが肝心だ。ソフトウェアへの入力さえ面倒、などと愚痴をいうはめにならないよう、自分に合った「会計ソフト」を選んでいきたい。