宇宙航空研究開発機構(JAXA)とナビコムアビエーションは5月27日、航空機から発見した災害情報を地上の運航拠点や災害対策本部などにデータ化して送信する機能を共同で開発し、ナビコムアビエーションの「ヘリコプター用地図情報表示装置」の機能の一部として製品化したことを発表した。
JAXAは、将来の航空交通に対応する技術確立を目的とするプロジェクト「DREAMSプロジェクト」の一環として、これまで音声による無線通信やホワイトボードなどを使って行われていた航空機と地上の運航拠点、災害対策本部などにおける情報の伝達、共有を、データ通信化することにより、より効率的で安全に救援活動を行うためのシステム「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」の研究開発を進めており、今回の製品化はその成果の1つ。
具体的には、ナビコムアビエーションが販売してきたイリジウム衛星通信を利用したヘリコプター用動態管理システムにD-NETで研究開発してきたユーザーインタフェースを組み込むことで、新しいコンセプトのヘリコプター用地図情報表示装置「NMS-01S」を開発、製品化したというもの。
同装置は、地図データやアプリケーションソフトを航空用に開発されたPCハードウェアにインストールしたもので、約1560分の1~約2560万分の1まで15段階の縮尺を選択でき、拡大図は詳細市街地図の表示も可能となっている。また、空港、飛行場、ヘリポートのほか、VOR/DME、NDB、TACANといった無線航法援助施設や、航空交通管制圏、特別管制区、TCAなどの空域情報が、必要に応じて表示させることが可能。空港やヘリポートなどの航空データに関しては、タワーの周波数、燃料の種類、運用時間などの詳細データの表示も可能だという。
さらに、これまで運航者からの要望の多かった送電線・鉄塔データも航空局が提供する送電線・鉄塔データを運航者が入手していれば表示が可能なほか、ナビコムアビエーションの「ヘリコプター動態管理システム」と接続することで、従来からの機能である地上局からの文字メッセージやルート情報の受信に加えて、ヘリコプター側から災害などのエリア情報を地上局に送信することが可能となったという。
こうした各種の機能を用いることで、新たに追加された各種の機能を用いることにより、ヘリコプターに搭載した地図情報表示装置から、災害の発生エリアや詳細内容をデータ化して送信し、地上の端末に表示することが可能になることから、従来の航空無線による音声通信で生じやすかった、詳細かつ正確なエリア情報を伝えることが容易になるほか、大規模災害発生時に、多数のヘリコプターが同じ周波数を使って音声通信を行う際に生じる、通信の輻輳(混線)の発生などを抑えることが可能になることが期待されることから、ナビコムアビエーションとJAXAでは、今後も、同製品の提供の加え、災害救援航空機などを支援するシステムの研究開発などにおいて、協力関係を強化していく予定としている。