STMicroelectronicsは5月16日(イタリア時間)、コスト効率と信頼性に優れたパワー・マイクロエレクトロニクス技術の開発を目指し、EUの援助を受け、3年にわたって進められたきた研究プログラム「LAST POWER(Large Area silicon-carbide Substrates and heTeroepitaxial GaN for POWER device applications)」の研究成果として、SiCおよびGaNの新たな技術を開発したことを発表した。

同研究プログラムは、ナノエレクトロニクス分野の官民パートナーシップであるENIAC JU(European Nanoelectronics Initiative Advisory Council Joint Undertaking)が2010年4月に設立したもので、プロジェクト・コーディネータであるSTMicroelectronicsのほか、LPE/ETC(イタリア)、Institute for Microelectronics and Microsystems of the National Research Council(IMM-CNR:イタリア)、Foundation for Research & Technology-Hellas(FORTH:ギリシャ)、NOVASiC(フランス)、Consorzio Catania Ricerche(CCR:イタリア)、Institute of High Pressure Physics(Unipress:ポーランド)、Universita della Calabria(イタリア)、SiCrystal(ドイツ)、SEPS Technologies(スウェーデン)、SenSiC(スウェーデン)、Acreo(スウェーデン)、Aristotle University of Thessaloniki(AUTH:ギリシャ)といったワイドバンドギャップ半導体(SiC/GaN)に取り組む民間企業、大学、公的研究機関が参加して研究が進められてきた。

SiC関連の主な成果としては、SiCrystalが実証した大面積4H-SiC基板(直径:150mm、オフ角度:2°)の結晶構造および表面粗さを、プロジェクト開始時の標準的な材料(直径:100mm、オフ角度: 4°)と同等としたことが挙げられる。また、150mmの4H-SiC基板を成長させることが可能なCVDリアクタの開発により、LPE/ETCが、600~1200V耐圧のJBS(ジャンクション・バリア・ショットキー)ダイオードやMOSFETの製造に適した、中程度にドープしたエピ層のエピタキシャル成長として利用できることも確認しており、これにより、STでは産業分野向け製品生産ラインにおけるJBSダイオードの製造が可能になったと説明している。

第1ロットの特性試験では、先端材料(オフ角度: 4°)と同等の電気性能が示されたことを確認しており。この際、NOVASiCが導入したCMPプロセス「StepSiC再生・平坦化技術」を導入することで、量産可能な技術とすることに成功したとする。

さらに、STとIMM-CNRが共同で実施したSiO2/SiC界面の研究により、4H-SiC MOSFET内でのチャネル移動度が向上することが確認されたほか、AcreoとFORTHの協力により、高温4H-SiC JFET/MOSFET用技術モジュールも開発したという。

一方のパワー・エレクトロニクス・アプリケーション向けGaNデバイス研究としては、150mmのSi基板上でAlGaN /GaN HEMTエピタキシャル構造を成長させることに成功し、厚さ3μmかつ200Vのブレークダウン電圧という目標を達成したほか、IMM-CNR、UnipressおよびSTが共同で、「金フリー」アプローチによるノーマリーオフAlGaN /GaN HEMTのための技術ステップを開発。各プロセス・モジュールは、STの生産ラインにおける製造フローチャートとの完全な互換性があると共に、HEMTの製造に統合されているとのことで、オフ角度2°の4H-SiC基板上で実証済みであるGaN/SiCデバイスのモノリシック集積化に向けた重要なステップが実現したとしている。