ビジネスエリートの関門とされるMBA(経営管理学修士)、日本でも注目されている学位だ。MBAを取得するためには、2年程度とされる時間や高額な学費など資金が必要となることもあり、ハードルは決して低くない。
MBAと報酬やキャリアへの影響、投資対効果との関係については調査があるが、一方で、MBA取得が幸福につながるかどうかについては調査がない。そこで、MBA情報サイトのMBA50.comが調査を行った。
MBA50.comでは北米、欧州、インド、中国、ブラジルの合計11のビジネススクールで学ぶ1100人以上の学生を対象に、幸福感について聞いた。学生の中には、通信教育を利用する学生も含まれているという。これら学生に、「MBAコースを取得する12ヶ月前」「MBAコース取得中の現在」「MBA取得後の将来」の3つについて、幸福を1~10(数字が大きくなるほど幸福)の10段階で評価してもらった。
その結果、MBA前では平均5.98だった幸福感が、MBA取得中の現在は7.71、そしてMBA取得後は8.53となり、だんだんと幸福感が上昇していることが分かった。
具体的にはなにが幸福感につながっているのだろうか? 最も多かったのは「自己啓発」で42.2%、次に「キャリアの前進」が19%となった。「経済的な報酬」(2.7%)よりも、「学ぶことで得られる喜び」(11.6%)、「人脈ができる」(9.3%)、「クラスメートから学べる」(7.7%)と体験そのものに幸せを感じているようだ。
学生を地域別にみると、現在の幸福度が高いのは北米と東欧の学生で、将来の幸福への期待が高いのは南米と東欧の学生となった。ビジネススクール間で結果に大きな開きはなかったが、フランスのビジネススクールでは特に将来への期待が大きかったという。調査対象の1校であるフランス EMLyon経営大学院のプログラムマネージャは、「起業家精神を啓発することが将来への期待につながっているのでは」と分析している。
このような結果について米ヴァージニア大ダーデンスクールの学部長は、「MBAの学生は確かな自己の成長を感じており、これが幸せに結びついている」と分析している。また、他の学生との交流も大きな影響を与えているとの分析もあり、どんな人と机を並べるかが重要になると見ることもできる。あるMBAの学部長は、「MBAプログラムの最初に正しい精神と環境を作っておくことが大切」と助言している。