岡山大学は5月20日、米国ベイラー医科大学との共同研究により、中枢神経の「ランビエ絞輪」形成機構の解明に大きな進展があったことを発表した。

成果は、岡山大大学院 医歯薬学総合研究科の大橋俊孝准教授、ベイラー医科大のMatthew N, Rasband教授らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、5月8日付けで「Neuron」に掲載された。

神経細胞は、電気的な興奮が飛ぶようにして伝わる「跳躍伝導」という仕組みを持つ。このようにして興奮を伝えるには、ランビエ絞輪というくびれの部分に電位差を発生させる「ナトリウムイオンチャネル」が高密度に分布する必要がある(画像1)。そして、ランビエ絞輪の細胞外に特殊な細胞外マトリクス構造が存在し、跳躍伝導速度を調節していることが確認されていた。

ナトリウムイオンチャネルがランビエ絞輪に高密度に分布するための仮説は、細胞外マトリクス分子(画像2の(1))と軸索側分子(画像2の(2))と鞘側の分子(画像2の(3))が共同して関わっているというものだが、実験の結果、実際にこの3つの分子間相互作用が共同して関わることが必要であることがわかった。

画像1。神経細胞の模式図

画像2。ナトリウムイオンチャネルがランビエ絞輪に高密度に分布するためには3つの分子間相互作用が関わっている

ヒトの身体には大別して中枢神経と末梢神経が存在するが、今回の研究では、中枢神経のランビエ絞輪の形成メカニズムの解明に1歩前進した形だ。また末梢神経のランビエ絞輪の構造も、共通の部分と異なった部分がありますが、形成メカニズムが判明しつつあるという。今回の研究成果は今後進むと思われる神経再生研究において、機能的な再生を行うための重要な情報となるとしている。