東北大学は5月21日、顔料を原料とした有限長カーボンナノチューブ分子の製造法を開発したと発表した。

図1 化学顔料からのらせん型有限長カーボンナノチューブ分子の合成。原料となった赤色顔料(上)と、合成されたらせん型有限長カーボンナノチューブ分子の分子構造(下)

同成果は、同大 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)・大学院理学研究科の磯部寛之教授らによるもの。詳細は英国化学誌「Chemical Science」に公開される。

私たちの身の回り・日常は、様々な色に飾られている。この「色の素」となっているのが、化学染料・顔料である。研究グループは今回、らせん型選択的合成法およびらせん型・アームチェア型の混合合成法の2種類の手法により、大量に工業生産されている有機顔料を有限長カーボンナノチューブ分子へと変換する製造法を新たに開発した。現在、有限長カーボンナノチューブ分子のボトムアップ化学合成法の開発研究が始まっているが、今回の研究では、最短長カーボンナノチューブ分子(0.25nm)の3倍長(0.75nm)となる有限長カーボンナノチューブ分子の製造法が開発されたという。

研究グループでは、2012年と2011年に2倍長までの有限長カーボンナノチューブ分子のボトムアップ化学合成を報告していたが、今回の研究により実現された3倍長が有限長カーボンナノチューブ分子の中での新しい世界最長記録となるという。また、同時に、らせん型有限長カーボンナノチューブ分子が筒をならべた空間充填構造を持つことを発見しており、カーボンナノチューブの新しい集積法としても注目されるとしている。

なお、研究グループでは、キロ・トン単位で入手可能な顔料を原料とすることで、量産型ナノテクノロジーの実現に進展がもたらされた成果となるとコメントしている。

図2 赤色顔料「Pigment red 168」から合成されたらせん型有限長カーボンナノチューブ分子を上から見た図。赤色は炭素原子、黄色はケイ素原子

図3 赤色顔料「Pigment red 168」から合成されたらせん型有限長カーボンナノチューブ分子を横から見た図

図4 今回の研究で同時に発見されたらせん型有限長カーボンナノチューブ分子の筒を連ねた集積構造を上から見た図

図5 今回の研究で同時に発見されたらせん型有限長カーボンナノチューブ分子の筒を連ねた集積構造を横から見た図