九州大学(九大)と住友金属鉱山は5月20日、コバルトや希土類元素などのレアメタルの抽出性に優れた新規の抽出剤を開発したと発表した。
同成果は、九大 大学院工学研究院 後藤雅宏教授らによるもの。同材料により、使用済み2次電池や蛍光管のリサイクルプロセスや鉱物資源の処理プロセスにおけるコバルトや希土類元素の抽出剤として応用が期待されるという。
ハイブリッド車(EV)や携帯用電子機器などに使用されるニッケル水素電池やリチウムイオン電池には、コバルトなどの有価金属が含有されているため、それらの使用済み2次電池から有価金属を回収する方法が検討されているものの、そうした2次電池には、コバルトとともにマンガンも含まれており、その効率的な分離回収が課題となっていた。
また、ニッケル酸化鉱やコバルトリッチクラスト、マンガン団塊といった海底資源にもコバルトが含まれているが、これら鉱物資源からの金属回収においてもコバルトとマンガンをどのように効率的に分離するかが課題となっていたほか、蛍光体材料、ニッケル水素電池の負極材、モータ用磁石などに用いられる希土類元素のリサイクルにおいては、希土類元素の混合物を含むリサイクル原料を酸に溶解してこの水溶液から回収しているが、効率性と分離に課題があった。製錬およびリサイクルのプロセスでは、回収しようとする目的金属を含む水溶液中から溶媒抽出法によって目的金属を抽出して分離・濃縮する方法が一般的に使われているが、これまでは高濃度のマンガンを含む水溶液からコバルトを選択的に取り出す抽出剤、あるいは希土類元素を効率的に分離できる抽出剤はなかった。
今回開発された抽出罪は、コバルトや希土類元素の抽出性に優れており、コバルトとマンガンを含む酸性溶液に混合することで、マンガンを水溶液に残したままコバルトを抽出剤相に効率よく抽出することが可能だという。同様に、従来分離が困難であった重希土類元素(ツリウム、イッテルビウム)と軽希土類元素(ランタン、セリウム)を共に含む水溶液から、軽希土類元素を優先的に抽出することもできる。また、ユーロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、亜鉛(Zn)を含む水溶液からは、ユーロピウムを選択的に抽出できることも確認しており、これらの元素の分離が可能となることが期待されるという。
なお、研究グループは今後も、同抽出剤を用いた製錬・リサイクルプロセスの開発を進め、包括連携協力を積極的に推進していくとコメントしている。