国立循環器病研究センター(国循)は5月16日、複雑な心血管構造を3次元CG(3DCG)技術により5分程度で作成し表現できるシステムを開発したと発表した。

同成果は、国循 情報統括部の原口亮 情報基盤開発室長、同 小児循環器科の黒嵜健一 医長らと、京都大学の中尾恵 准教授らによるもの。詳細は、科学誌「生体医工学」に5月20日に掲載される予定。

先天性心疾患は、心臓の構造に生まれつき異常があるために血液の循環に異常を来し、心臓や肺に負担がかかる病気の総称で、新生児期の診断と治療が重要である。

治療としては、これまでは熟練した専門医が心エコー動画像から心血管構造を頭の中で3次元的に把握して病態を理解して行っていたが、頭の中の3次元的なイメージを表現し他者へ伝える手段としては2次元の手書きイラストしかなく、患児の家族への説明に多大な時間を要するといった課題があった。

今回開発されたシステムでは、心血管断面の連続したエコー動画像から血管の位置を熟練専門医が確認し、重ね合わせ表示された立体CGテンプレートモデルの血管位置をマウスのドラッグ操作を数回繰り返すことで、5分程度で患者個別の立体CGモデルを作成することが可能となる。

また心血管を表現するため独自のデータ構造を採用しているため、本来左室とつながるべき大血管が右室とつながっている病態や、左室と右室との間の壁に穴が空いている病態も、簡単な操作で表現することが可能となっている。

なお、研究グループでは、同システムを用いることで熟練専門医の頭の中の3次元イメージをその場で表現し伝えることができるようになるほか、立体CGモデルは心臓の構造を容易に把握できるため、家族への説明のほか、症例を蓄積していくことで医学教育にも有用なものとなると説明している。

今回開発された心血管構造の3DCGモデル作成システムのスクリーンショット