日本オラクルは2013年5月14日、東京・秋葉原UDXにて「Java Day Tokyo 2013」を開催した。メインテーマは"Make the Future Java(Javaで未来を作ろう)"。特に今年は、Java SEとJava EEのメジャーアップデートが公開される予定で、ほかにもJavaFXやJava Embeddedなどの最新トピックを扱ったセッションに参加するため、多数の技術者が集まった。

Java Technology AmbassadorのSimon Ritter氏

午前中に開催された基調講演には、複数のエバンジェリストがメインスピーカーとして登壇した。彼らは、最新機能のデモンストレーションやゲストスピーカーを交えてJavaのビジネスに対する優位性を主張し、Javaの進化を手助けするのは来場者であるデベロッパーの積極的な参加であることを強調した。

JDK 8のテストパイロット募集中!

最初に登壇したJava Technology AmbassadorのSimon Ritter氏は、Java SEの最新情報と戦略について語った。Ritter氏は、OX XやLinux/ARMへの対応などJava 7がマルチプラットフォーム環境として進化し続けていることを述べ、昨年春にJava 6のシェアを抜いたあとも順調にユーザーが増え続けていることを強調し、バージョンアップを改めて推奨した。

JDK 8のアップデート内容

その上で年内の提供が予定されている「Java SE 8/JDK 8」について取り上げ、さまざまな改良によって、さらなるイノベーションがもたらされるとし、すでに大きな変化としてニュースなどで伝えられている新機能を改めて紹介した。

1つは言語仕様の改革、今回最もホットな話題として注目されている「Lambda式」だ。Ritter氏は無名関数を用いたコード例を取り上げて、パラレル処理のタスクを簡潔に記述できる利点を紹介した。

Ritter氏は、JDK 8のリリースが遅れていることについて釈明し、聴講者に対して"テストパイロット"になってフィードバックを寄せて欲しいと述べた。すでに多くの機能が盛り込まれており、LambdaやJavaFX 8などを試すことができるという。

最後に氏は、今後の展望の1つとしてJava SE 9とさらなる将来についても軽く触れた。Java 8は2014年の第一四半期、その2年後の2016年にローンチを予定しているという。JDKやNetBeans、JavaFXなどの開発はすべて連携しており、同期を取って進めていくことを強調した。

OpenJDKでは"テストパイロット"募集中!

JDK 8でJavaFXの3Dを体験してほしい

Java Client and Embedded Platforms担当バイスプレジデントのNandini Ramani氏

2人目のメインスピーカーであるJava Client and Embedded Platforms担当バイスプレジデントのNandini Ramani氏は、JavaFXの最新情報と戦略について語った。冒頭でRamini氏は、OpenJDKやMac App StoreでJavaFXアプリケーションを入手して楽しんでほしいと述べたうえで、ロードマップを紹介し、Ritter氏と同様にJDKの開発と同期して進められていることを強調した。

JavaFX 8の最も大きなキーワードは3Dへの対応だ。まずは見てほしいと、Java Technology AmbassadorのJim Weaver氏が呼ばれ、3Dアプリケーションのデモンストレーションが披露された。Weaver氏は、片手にタブレットマシンを持ち、実際にそのデバイス上で稼働するデモアプリをプロジェクターに映しつつ紹介した。

JavaFXの特徴。3Dの文字が目立つ

美麗な3D画像で作られた貨物置き場の様子。この画像で目録を見たりコンテナを移動したりできる

Java FXで作られたデュークには、石模様のようなテクスチャが貼られている

Weaver氏は、JavaFXが活躍する1例として、港などにおける貨物コンテナの管理システムを取り上げた。立体的に積まれたコンテナは、平面的なマップやリストでは管理に限界がある。そこで、3D化された画面上に目録を表示したり、コンテナを移動したりすることで、管理効率が向上するという。

JavaFX 3Dで提供されるのは、3Dのジオメトリ(シェイプ)、カメラ、ライトの3つのコントロールだ。いずれも簡潔なコードで記述することができるため、パフォーマンスにすぐれる。実際、JavaFXで作られた3Dオブジェクトがタブレットデバイス上でなめらかに動く様子が印象的だった。

デモを行うJava Technology AmbassadorのJim Weaver氏

ひと通りのデモンストレーションを行ったのち、Weaver氏は、JavaFXのコミュニティに参加してほしいと述べ、サイトではさまざまな技術者が活発に議論を交わし、最新の情報を得られるようになっていることを強調した。そして最後に、JDK 8をダウンロードして試してほしいと、テレビCMで話題になった林修氏の「いつやるか?今でしょ!」のセリフを日本語で叫び、聴衆の喝采を浴びていた。

Java Embeddedの高い汎用性

Weaver氏からバトンを戻されたRamani氏は、続いてJava Embeddedの戦略について語った。1960年代のプロプライエタリな機器から始まったIT技術は、2000年前後のx86パソコン世代を過ぎ、標準技術を使った"Internet of Things"の時代に入っているとした。

この時代では、すでに世界人口よりも多くのデバイスがネットワークに接続されており、今後もますます増えていくだろう。このとき、組み込み系のJavaはさまざまな分野で活躍するとRamani氏は強調する。

例えば自動化された都市では、交通管制のための信号管理やナンバープレート認証、渋滞検知などにコンピューティングが用いられる。ほかにも、工場の監視機器、自動販売機、前述したような貨物管理、医療(リモート患者監視)、ホームオートメーションなどをあげ、実にさまざまな機器がさまざまな方式で相互に接続されていることを確認した。

一方でRamini氏は、こうした分野の組み込み系プラットフォームには何が必要かと問いかけた。まず、常にオンラインでなければならないこと。そして、特に医療のような個人情報を扱うコンピューティングの場合、セキュリティ機能が特に重要であり、さまざまな機器と接続するためのI/Oやリモートアップデートも必要であると述べた。

こうしたニーズに対してJavaは、さまざまな点で適合するとRamini氏は言う。標準技術で、900万人を超えるデベロッパーが存在しており、成熟した技術である。そして、さまざまなデバイスをサポートしていることが有利な点であると述べた。

Cloud Application Foundation and Java EE担当バイスプレジデントのCameron Purdy氏

Ramani氏は、Java SE Embedded(医療機器等のハイスペック向け)、Oracle Java ME Embedded Client(OJEC、STB等のミドルクラス向け)、Java ME Embedded(携帯等の小型デバイス向け)、Java Card(セキュリティカード)などのプラットフォームに加えて、Java ME-Eが含まれるスイート製品「Java Embedded Suite」や、オプションでイベント駆動型の「OEP Embedded」などを紹介し、さまざまな分野でJavaが活躍することを再確認した。

HTML5のサービス開発にはJava EE 7

Cloud Application Foundation and Java EE担当バイスプレジデントのCameron Purdy氏は、Java EE 7の最新トピックを中心に解説した。バッチ処理・メッセージング・JSONサポートなどが新機能としてあげられたが、氏が強調したのはHTML5を用いたWebサービス開発のため、WebSocketやServer Sent Eventに対応したことだ。

HTML5の周辺技術として注目されるWebSocketについては、Java Technology AmbassadorのArun Gupta氏が登壇し、デモアプリケーションを披露してみせた。

デモを披露するJava Technology AmbassadorのArun Gupta氏(写真右)

Gupta氏は、Java EE 7の参照実装であるGlassFish上で、複数の異なる種類のWebブラウザを用いて、ホワイトボードを共有して互いの描画をリアルタイムに反映する様子を見せてくれた。自動車に乗っている子どもたちがゲームを楽しんでいるという設定で、メンバーが増えたりトンネル内などで通信が切れたりした時を想定し、JavaとJavaScriptのサンプルコードで実際の処理を説明した。

異なるブラウザ間でゲームを行なうことを想定したデモ

コミュニティがJavaの一画を担う

Java Technology OutreachグループディレクターのSharat Chander氏

最後のメインスピーカーは、Java Technology OutreachグループディレクターのSharat Chander氏だ。サブタイトルを今回のメインテーマになぞって、「Java Community - "You make the future Java"」とし、Javaコミュニティの重要性について語った。

Chander氏は、Javaを構成する要素は「Oracle」「技術」そして「コミュニティ」であり、Javaの歴史は開発者たちの"参加"によって作られてきたと強調した。

氏は、標準化期間のJCPや一般開発者の集まりであるJUG(Java User Group)までさまざまなコミュニティがあり、世界に公式のJUGが250以上もあると述べた。その中でも精力的な活動を行なっているJUGの1つが日本Javaユーザーグループであると紹介。会長の鈴木雄介氏を壇上に招いた。

Javaは、Oracleと技術、そしてコミュニティによって作られている

日本Javaユーザーグループの会長を務める鈴木雄介氏

鈴木雄介氏は、2013年5月現在で2000人超の会員が参加しており、カンファレンスやセミナー、講師派遣などの活動を行なっていると紹介した。現在は、週末に行うハンズオンセミナーも企画中であるという。氏は、デベロッパーが成長する場としてJJUGを活用していただきたい、悩みを共有して解決のきっかけを見つけようと聴講者に語りかけた。

マイクが戻されるとChander氏は、国際イベントJavaOneの開催予定を紹介し、「互いにつながることが大事」として、参加を呼びかけた。そして最後に、JavaOneのノベルティTシャツを客席に向かって投げてプレゼントし、またしても喝采を浴びていた。

JJUGではさまざまな活動を通して、Javaの普及と開発者の支援を行なっている