資生堂は、加齢や紫外線や乾燥などによってハリ・弾力が低下した肌で減少することが知られているVII型コラーゲンからなるアンカリングフィブリル(吊り型コラーゲン)の再生に成功したと発表した。
皮膚は老化すると、真皮に存在するコラーゲン線維(I型、III型と呼ばれるコラーゲンで構成される真皮コラーゲン)が減少するとともに変性し、肌のハリ・弾力が低下することが知られており、同社では1983年に皮膚の弾力や厚みに重要な役割をはたしている真皮コラーゲンの産生を高める成分「ビタミンC」を開発したほか、基底膜に存在する表皮を健やかな状態に保つはたらきをしているシート型コラーゲン(IV型)が、紫外線によって分解されることから、その産生を高める成分「ユズ種子エキス」などの開発を行ってきた。
こうした研究は、真皮コラーゲン、基底膜のシート型コラーゲンの産生を高め「ハリ・弾力の低下」に対応するものだが、よりハリ・弾力のある健やかな皮膚にしていくためには、表皮と真皮がしっかりとつながっていることに加え、双方のコミュニケーションがスムーズに行なわれていることが重要となる。その役割を担うのが吊り型コラーゲンであるが、加齢や紫外線や乾燥などによってハリ・弾力が低下した肌で減少することは知られていたものの、それを再生させる技術は確立していなかった。
今回の研究は、ハリ・弾力に対応したスキンケアソリューションの進化をはかるため、吊り型コラーゲンの再生を目指して実施されたもの。これまでの研究から、吊り型コラーゲンの減少には、吊り型コラーゲン分解酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ)が関わっていることは知られていたが、この酵素のはたらきを抑えても、吊り型コラーゲンを再生することはできない。
そこで今回、研究グループは同社が発見していた基底膜の構成成分であるグリコサミノグリカンを分解し、表皮の不調を引き起こすエイジング酵素(エンド-β-D-グルクロニダーゼ)に着目し、三次元培養皮膚モデルを用いて研究を進めたところ、吊り型コラーゲン分解酵素とエイジング酵素、この2つの酵素のはたらきを同時に抑えることで、吊り型コラーゲンの再生に成功した。
さらに、吊り型コラーゲンを再生させた三次元培養皮膚モデルについて研究を進めたところ、表皮と真皮がしっかりと結合し、吊り型コラーゲン本来の機能を再現させることにも成功したという。
なお、吊り型コラーゲン分解酵素のはたらきを抑える成分としては、数ある候補成分の中から「マンゴスチン樹皮エキス」が有効であることが見出されたほか、エイジング酵素のはたらきを抑える成分としては、「カノコソウエキス」が高い効果を及ぼすことも確認しており、同社では今回の研究を応用することで、加齢にともない低下するハリ・弾力を回復させる抗老化スキンケア製品の開発を進めていく計画としている。