ライオンは5月9日、"女性の薄毛"に関する研究として、女性由来のヒト毛乳頭細胞に対して網羅的遺伝子解析を行ったところ、その原因は、女性ホルモンが減少することで直接引き起こされる可能性を示すデータを確認したことほか、育毛有効成分「6-ベンジルアミノプリン(6-BA)が、発毛促進と脱毛抑制の効果を期待できることも、細胞を用いた遺伝子レベルの解析で確認したと発表した。
同成果は同社 生命科学研究所と順天堂大学の植木理恵 先任准教授らによるもの。詳細は5月8日(英国時間)に英国エジンバラにて開催された「第6回国際研究皮膚科学会(Edinburgh International Conference Centre:EICC)」にて発表された。
同社では、これまでの研究から、男性の薄毛の原因の1つとして、毛根におけるエネルギー不足があることを発見、エネルギー補給物質としてペンタデカン酸グリセリド(PDG)を見出しているほか、育毛に有効な成分を効率よく頭皮に経皮吸収させる技術の開発や、男性型脱毛症の毛乳頭細胞の網羅的遺伝子解析による発毛促進シグナル「BMP,エフリン」の低下と脱毛シグナル「NT-4」の増加が関係していること、ならびに育毛有効成分「6-BA」が「BMP,エフリン」の生成を増加させること、オキナワモズク抽出物が「NT-4」の生成を阻害することなどを発見してきた。
また、2004年からは、"女性の薄毛"の原因解明に向けた研究を行ってきており、2005年には女性ホルモンにより「BMP」の発現が促進されることを確認していた。
今回の研究は、40-60代の薄毛が気になる女性を対象に、洗髪時の抜け毛について分析した結果、閉経後の女性は抜け毛が多くなる傾向があることから、閉経後の女性ホルモンの減少が女性の毛髪に何らかの影響を与えると考え、女性ホルモンと毛髪の成長に関連する因子との関係について、網羅的遺伝子解析を用いて検討を行ったというもの。
具体的には、女性ホルモンで影響を受ける毛髪に関与する遺伝子を明らかにすることを目的に、女性由来のヒト毛乳頭細胞を用い、男性ホルモン非存在下で女性ホルモンの有無による網羅的遺伝子解析をDNAマイクロアレイを用いて、2万1558個の遺伝子を分析した。
その結果、毛髪に関与し、女性ホルモンの有無で発現量が変動する遺伝子として、女性ホルモンの存在下で発現が増加する遺伝子(形態形成や細胞の増殖に関係する遺伝子)が122個、発現が低下する遺伝子(炎症やアポトーシス(細胞死)に関係する遺伝子)が81個であることが確認された。
これらの成果を受けてさらに、これらの中から毛の成長や薄毛と関連が高い遺伝子として、発毛を促進すると考えられる因子(発毛促進因子)「BMP2」「LEF1」「MSX2」「BCL2」など、脱毛を促進すると考えられる因子(脱毛因子)「IL1A」「FGF18」などを選定し、女性ホルモンの有無による変動をRT-PCR解析により定量的に調べたところ、女性ホルモンが存在すると、発毛促進因子の中で「BMP2」「MSX2」「BCL2」が有意に増加し、脱毛因子「IL1A」が有意に減少することが確認されたことから、女性ホルモンの減少により、発毛促進因子の低下と脱毛因子の増加が起こり、それによって"女性の薄毛"が引き起こされる可能性が示唆されたという。
また、「BMP2」は、それが機能しないと毛根が形成されなくなることが知られており、毛根の形成の鍵となる因子と考えられるほか、「IL1A」は、炎症性の因子で、毛の成長を抑制する作用やアポトーシス(細胞死)を誘導する作用が知られており、脱毛を引き起こす因子と考えられているため、発毛促進因子として「BMP2」、脱毛因子として「IL1A」に着目して、ヒト臨床試験にて育毛効果が認められている数種類の成分を、女性由来のヒト毛乳頭細胞に添加して、両遺伝子の発現量をRT-PCRを用いて評価したところ、添加した成分の1つ「6-BA」が、発毛促進因子「BMP2」の発現量を増加させ、脱毛因子「IL1A」の発現量を抑制することを確認したとする。
これらの結果は、「6-BA」が、女性ホルモンが減少することで引き起こされる"女性の薄毛"に、効果的な作用がある可能性を示すものであり、研究グループでは、今後、今回の知見を応用し、"女性の薄毛"に対応する製品の開発を進めていく計画としている。