北海道大学(北大)は5月10日、-80℃から+220℃までの温度検出が可能で、物質自体は300℃にも耐えられる特殊構造を持った、温度変化によって発光色が変わる「カメレオン発光体」を開発したことを発表した。
同成果は、同大大学院工学研究院の長谷川靖哉氏、同 宮田康平氏、同大大学院理学研究院の加藤昌子氏らによるもの。詳細は独化学会の学術誌「Angewandte Chemie」に掲載された。
現在,宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究機関が、超音速旅客機や大気圏突入型の宇宙船の開発を進めているが、そうした航空機の開発では機体設計、中でも、超高速飛行時の機体表面の温度および圧力を正確に計測する技術が求められている。そのため、機体表面の温度を正確に検知する塗料を設計機体に塗布して機体表面の状態を観察する研究(TSP:Temperature-Sensitive Paint)が進められてきた。
従来、そうしたTSP研究では、発光体の温度変化による発光強度変化を用いて、風洞実験時における機体表面の温度観察が行われてきたが、発光体の温度変化領域が狭く、高温状態では分解してしまうという課題があった。
そこで、今回、研究グループでは、希土類(レアアース)から構成された3次元ネットワーク型のポリマー分子を開発することで、300℃の高温に耐え、250℃でも光ることが可能な「新型カメレオン発光体」を開発した。
同発光体は、レアアースとしてユーロビウム(Eu)とテルビウム(Tb)を同時に組み込むことで-80℃の低温域では緑色、中温域ではレモン色から黄色を経てオレンジ色へ、そして200℃を超す高温域では赤く輝く機能を搭載することに成功。
これにより、従来以上の精密な温度計測が可能となり、幅広い温度計測が可能となるほか、分解しない性質のため、何回でも繰り返し使用することができたり、高い発光効率を実現しているため、従来以上に美しい輝きを発することが可能だという。
なお、研究グループでは、今回開発されたカメレオン発光体を、超音速飛行機や宇宙船の開発だけでなく超高速鉄道や自動車の設計開発にも応用することで、次世代の乗り物の開発が進むことが期待されるとコメントしている。