OIST、生体が環境のアルカリ度を感知する分子機構・細胞機構を解明

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、生体が環境のアルカリ度を感知する分子機構・細胞機構を明らかにしたと発表した。

同成果は、OIST情報処理生物学ユニットの丸山一郎 教授らによるもので、詳細は生物学全般、特に分子生物学、細胞生物学、遺伝学、神経科学、生態学、進化生物学を対象とした学術雑誌「Current Biology」に掲載された。

溶液中の水素イオン濃度の尺度である「pH」は、7より低い物質が酸性、高い物質が塩基性/アルカリ性であることが知られており、細胞から生体、あるいは生態系にいたるまで、あらゆる生物系には特定の最適pH範囲があることも知られている。しかし、すべての系が同じ範囲を好むわけではなく、バクテリアでも極端に高いpHの中でよく生育するものもいれば、極端に低いpHを好むものがいることも知られているし、人体でも、平均しておおよそ中性を保っているが、胃の組織はpH1でも平気だが、すい臓の組織はpH8付近が最適となっている。

これまでの研究から、生体が酸度をどのように検知しているのかについては知られていたが、アルカリ度に関しては謎が多かった。そこで今回、研究グループは、生体がアルカリ度を感知する細胞分子機構の解明に向け、最大pH10.4の条件でも生活可能な線虫C. elegansを用いて実験を行った。

具体的には、線虫のアルカリ度の好みを利用して、アルカリ度の感知に関わる特定のニューロンと付随のタンパク質経路を正確に特定するために通常の個体と遺伝子操作した個体を比較。その結果、線虫の味覚にも関わるニューロンの機能に必要な遺伝子「ASEL」を取り除くと、線虫は環境のアルカリ度を認識できなくなってしまうことが判明した。

また併せて、線虫の環境からのアルカリ性刺激と脳内のASELの活動とを仲介する特定のタンパク質も突き止めたという。

なお、研究グループでは、今回のメカニズムがヒトでも働いているかどうかは不明だが、今回の成果は、他の科学者たちがヒトでの同じ現象を追求する糸口として役立つのではないかと考えられるとコメントしている。