計測機器大手Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは5月9日、SD UHS-IIのホスト製品およびメモリカード向けに、レシーバコンプライアンス試験ソリューション「Agilent N5990A オプション120」を発表した。
リムーバブルメモリカードの代表的な規格であるSDメモリカードは、カメラ、携帯電話、ノートパソコン、GPSレシーバなどのポータブル機器に採用されている。UHS-IIは、SDリビジョン4.0をもとに、高解像度ビデオの録画、低消費電力、最大1.56Gb/sの伝送速度などを実現した次世代SDメモリカード規格である。
「Agilent N5990A オプション120」は、SD Associationが新たに策定したUHS-IIメモリカード規格に対応したホスト機器およびメモリカードの受信ポートの特性評価やコンプライアンス試験を正確に行うことができる。物理層向けのレシーバ試験自動化ソリューションで、アジレントの高性能シリアルBERT(ビット誤り率測定器)「Agilent J-BERT N4903B」を中心に、関連機器やアクセサリ類から構成されている。
UHS-II受信ポートの設計においては、規格への適合性の検証や設計マージンの確保などで、様々な課題がある。リファレンスクロック、伝送速度、デバイスタイプの組み合わせが多岐にわたるため、測定にも工数がかかる。レシーバの負荷耐性を検証するには、ランダムジッタ、正弦波ジッタ、シンボル間干渉など、様々なジッタを印加できるパターン発生器が必要となる。測定対象のデバイスをループバックモードに入れ、強制的にEIDLE状態をオン/オフするには、複雑なパターンシーケンスが必要となる。
アジレントのレシーバ試験ソリューションは、高性能シリアルBERT「J-BERT N4903B」、「N4880A リファレンス・クロック・マルチプライヤ」(ホスト機器のレシーバ試験用)、「N4877A クロック・データ・リカバリ」(1Gb/s未満のデバイスの測定用)、オシロスコープ「Infiniium 90000 シリーズ」、UHS-IIレシーバ試験自動化ソフトウェア「Agilent N5990A オプション120」(BitifEye社の開発)、およびアクセサリ類から構成される。UHS-II測定治具(ホスト機器用、およびメモリカード用)は、米国ではAstek社、その他の国ではBitifEye社が提供している。
UHS-IIレシーバ試験ソリューションの具体的な特徴は以下の通り。
- 電圧が低い場合、遷移時間が遅い場合、スペクトラム拡散クロックモジュレーション(SSC)など、現実の動作条件下であっても、J-BERTパターン発生器をシステムのリファレンスクロックに固定することが可能。ホスト機器の試験に最適。
- メモリカードの試験で要求されるポイント-ポイント間接続、リング型接続に対応。リファレンスクロックに、コヒーレントまたは非コヒーレントのジッタ印加に対応。
- 従来は数日程度かかっていたUHS-IIのレシーバ試験を数時間程度に短縮。アジレントの自動化ソフトウェアを使用することで、パターン発生器のループバックトレーニングの簡素化、信号条件のキャリブレーション、デバイスおよびホスト機器の試験、EIDLEの自動試験が可能。
- MIPI M-PHY、PCIe、USB、SATA、DisplayPortなどの用途にも利用できるため、効率的な投資を実現。
なお、UHS-IIの送信試験向けには、「Infiniium 90000」シリーズオシロスコープ用として「N6461A 自動テストソフトウェア」を、リターンロスおよびインピーダンス試験向けには、「E5071C ENA オプションTDR」を提供している。
「N5990A オプション120」の価格は約150万円。1年間のソフトウェア無償アップデートが含まれている。すでに販売を開始している。