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IBMの研究者による完全準同型暗号(Fully Homomorphic Encryption)の実装が「HElib」として公開された。C++で実装されており、GPLv2またはこれ以降のバージョンのライセンスに準じると説明されている。現時点では「Fully Homomorphic Encryption without Bootstrapping (PDF), 2011」で説明されているBootstrappを使わないタイプの完全準同型暗号が実装されている。さまざまな高速化手法が適用されており、今後の活用が期待される。
完全準同型暗号は公開鍵暗号の一種で、乗算と加算の双方を実施できるところに特徴がある。現在広く一般的に使われている公開鍵暗号は乗算、または加算のどちらかに対応しているが、乗算と加算のどちらにも対応したものはない。HElibは完全準同型暗号を実装しており、データを暗号化したままで元データの加算や乗算を実施することができる。
完全準同型暗号を実現するための基本的な方法に関しては、2009年にIBMの研究者であるCraig Gentry氏から「A FULLY HOMOMORPHIC ENCRYPTION SCHEME」という論文が発表され、広く知られるようになった。HElibが実装している2011年に発表された方法は、2009年に発表された基本的な方法に関して、パフォーマンスを向上させるとともに管理性も向上させる別のアプローチを示したもので、ソフトウェアとして実装するのに適したものとなっている。
今後クラウドコンピューティングサービスといったように、重要なデータを社外のサーバに保持するケースが増える場合、完全準同型暗号は安全性と利便性を実現するための主要技術になるとみられており、高性能な実装系の存在が欠かせない。HElibはオープンソースソフトウェアとして公開された完全準同型暗号の実装系として注目される。