ビジネスチャンスを国外に広げたり、国外のパートナーと協業したりするため、幹部や社員に英語力の向上を要求する企業が増えてきている。また、人材採用などで、TOEICの得点数を募集要項に盛り込む企業も多い。

しかし、NECラーニングによれば、ビジネス現場で本当に役に立つ英語力を判定するには、2013年4月より同社が提供している英語スピーキングテスト「OPIc(Oral Proficiency Interview-computer)」が最適だという。

OPIcとは、どのようなテストで、受験者のどのような英語力を測るものなのだろうか。これによって、企業はどのようなメリットを得られるのだろうか。NECラーニング マネジメント研修事業部 事業部長である重野和栄氏に話を聞いた。

--OPIcは受験者の何を評価するテストなのでしょうか--

NECラーニング
マネジメント研修事業部
事業部長 重野和栄氏

重野 グローバル展開を行うビジネスにおいては、「英語力」が重要などと言われるのですが、私たちはことばとして足りないと感じています。現場で本当に必要となるのは、「英語コミュニケーション力」です。

相手が話していることを理解し、自分の気持ちや考え、状況などを伝え、相手の考えをさらに引き出すための質問ができること。時にはフランクな会話も、スムーズなビジネスには必要となるかもしれません。英語を使ってコミュニケーションをとる力こそが、本来重要なのです。

OPIcは、この英語コミュニケーション力を評価するためのテストです。全米外国語教育協会(ACTFL)が、従来から提供している1対1のインタビュー形式で行われるOPIテストを、iBT(internet Based Test)形式として2007年に開発しました。


OPIc(Oral Proficiency Interview-computer)

OPIでは受験者の能力を11段階(Novice LOW~Advanced HIGH・Superior・Distinguished)で評価しますが、OPIcではそのうち下位から7段階(Novice LOW~Advanced LOW)を判定することが可能です。例えば、OPIc最上位であるAdvanced LOWは「自分の考えや経験を流暢に表現できる。討論や交渉、説得などの実際の業務で言語を駆使することができる」と判定されるように、ビジネスに即した評価がなされることがわかります。

ACTFLは世界的にも権威のある機関で、40年以上の歴史を持ち、英語のほか日本語や中国語など世界70か国の言語のスピーキングテストと共通の評価基準を提供しています。OPIcテストは、英語だけでも世界40か国以上で活用され、のべ60万人を超える人が受験しています。

OPIcはコンピュータを用いてテストを行いますが、ACTFLの公認評価者が厳格に評価する仕組みになっており、その結果を国際的に信頼のおけるACTFL認定証として得ることができます。

OPIcのテスト概要は以下のとおり

テスト言語 英語
問題数 12~15問(受験者によって異なる)
テスト時間 約60分(オリエンテーション20分、テスト最大40分)
問題タイプ Background Surveyに基づいて個人に合わせた問題を出題、職業、趣味、スポーツ、旅行、関心事などに対する質問
テストの特長 個人に合わせた出題/対面インタビューに近い環境(iBT)で受験者の緊張緩和/問題毎の達成度測定ではない総合的な評価で会話の熟達度を判定/迅速な結果通知
評価基準 ACTFL Speaking Guidelines 基準 OPIc level 1~7 (Novice Low~Advanced Low)
評価要素 Function/ Global Tasks・Language Control ・Text Type ・Contents/ Context ・Comprehensibility

--OPIcのテストはどのような形式で行われますか--

試験ではAvaから聞かれる質問に答えるが、Yes or Noでは終わらないコミュニケーション力が問われる

重野 試験では、パソコンの画面に「Ava」という女性のキャラクターが登場し、受験者に質問を投げかけます。受験者は、マイクに向かってこの質問に対する回答を"自由に"話します。この発声内容が録音・送付され、このデータを基に総合的な評価が下されます。

一般的なテストとは異なり、1問1答の「解答」を求める単純な質問はされません。また、質問も2回までしか聞くことができません。つまり、質問をちゃんと聞き取り、論理的に「回答」を考え、自分の気持ちや意志を相手に伝えることができるかどうかが重要なのです。

しかし、自分が興味や知識のないことについて聞かれても、満足に話せない場合があるでしょう。そこでOPIcでは、テストに際して、受験者の趣味や興味についてアンケートを取ることで、個々の受験者になじみのあるテーマが出題される「バックグラウンドサーベイ」が行われます。また、受験者が自身の英語レベルを設定する「セルフアセスメント」も盛り込まれており、リラックスしてしっかり話せるように配慮されています。

試験時間は最大40分あり、設問は12~15問の間で変動します。1つの質問に対する発声の長さは自由にコントロールでき、すべての質問に回答しなくても正当に評価されるようになっています。40分以内に試験を終えても構いません。

あくまで参考ですが、英語に堪能な人ほどこの時間をフルに使うことができるようです。逆に不慣れだと話が続かず、短時間でテストを終えてしまいます。対策が可能なテスト形式ではありませんが、会話を楽しむことがコツと言えるでしょう。

--OPIcは企業にとってどのようなメリットがありますか--

重野 メリットの1つは、評価が適正で信頼できるため、英語コミュニケーション力が必要な職務に対して、適切な人材を割り当てることができるようになることです。もう1つは、事前に各人材の能力を正確に判定しておくことで、英語教育の投資を最適化できることです。評価結果は5営業日後に確認できるため、人材の選定や教育方法の決定などを迅速に行えるのもメリットと言えるでしょう。

グローバルに事業を展開している韓国企業では、新卒採用でも人事評価でも、英語コミュニケーション力が非常に重要視されています。従来は彼らもTOEICを基準にしていたのですが、実際にはビジネス現場で話すことができない者も多く、再教育や再採用に多大なコストがかかっていたそうです。

そこで、サムスンのほか多くの韓国企業が、OPIcの評価を人材評価の基準として採用し始め、今では1,300を超える企業が活用しています。

今回、OPIcを日本で展開するにあたり、標準のACTFL認定書に加えてNECラーニングからの要請のもと、日本語のScore Reportを付与してもらえるようになりました。このレポートは評価レベルに応じて発行され、どのような英語コミュニケーション力を有しているか、評価レベルを向上させるにはどのような習練が必要か、などのアドバイスが記載されています。

私は、このレポートとTOEIC(Listening/Reading)による英語の基礎力評価を組み合わせて、最適な教育方法を選定するのがよいと考えています。

試験は当社のOPIcテストセンターで実施し、厳格に本人確認を行って成り済ましやカンニングを防止するため、安心して評価に利用することができます。また今後は、当社の研修コースに英語コミュニケーション力を鍛えるカリキュラムを組み込んでいく予定です。OPIcのレベル向上をモチベーションとして、ビジネスで使える英語力を身に付けていただきたいと考えています。