ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンは5月7日、ザ・ハフィントン・ポストの日本語版サイトを開設した。ザ・ハフィントン・ポストは2005年に米国で開設されたソーシャルニュースメディア。イギリス、カナダ、フランス、スペイン、イタリアで展開されており、日本はアジアで初めてのサイト開設となる。
同サイトは「ブログ記事」、「ニュース記事」、「ソーシャルコメント」の3つの要素で構成されており、日本版では当初は4カテゴリ(政治、経済、国際、社会)を扱う。米国サイトではテクノロジー、エンタテインメント、健康、ライフスタイルといった幅広いセクションの情報を掲載しており、2013年1月時点で月間4600万ユーザーが閲覧し、800万のコメント投稿があるという。
ブログ記事は、「ユーザーと共に議論を深めていける人」という要件のもと、約70名が同サイトへの寄稿を承諾したという。ブロガーには、ジャーナリストの津田大介氏や佐々木俊尚氏、ライブドア元社長の堀江貴文氏、各政党の国会議員などが名を連ねる。
日本でのサイト開設にあたり、創設者であるアリアナ・ハフィントン氏も来日し、日本版への意気込みを語った。「日本は変革、移行の時代に差し掛かっている。安倍総理によるアベノミクスで日本を再建しようとしている瞬間に、何をしようとしているか、全てを網羅したい。このようなタイミングでサイトを開始できることを嬉しく思う」(アリアナ氏)
ハフィントン・ポストは"ただのニュースサイト"ではなく、言論空間として、コメント欄を大きく取ることで対話やコミュニケーションを活性化させることが目的だという。「一方的なプレゼンテーションではなく、対話を通して関わりを深めて欲しい。また、日本語で投稿されたコメントは各国のサイト向けに翻訳される。これによりグローバルな対話が可能となる」(アリアナ氏)
アメリカではオバマ大統領が寄稿したことがあり、日本版も著名人約70名がブロガーとして開設当初に参加するが、「一番投稿して欲しいのは普通の人」(アリアナ氏)だという。米国での「政治家やセレブの隣に10代のホームレスのブログが掲載されたことがある。そのブログがハーバードの入学審査官の目にとまり、ハーバードへの入学が決まった」という例を挙げ、様々な人が平等に投稿でき、質が高ければ社会的地位は関係ないメディア空間の創設に意欲を示した。
日本版の編集長にはWIRED.jp、BLOGOSなどに携わった松浦茂樹氏が就任。松浦氏はハフィントン・ポストのターゲット層を団塊ジュニア世代と語り、「私自身も世代の一人。人口ピラミッドで幅が広い世代にも関わらず、今ひとつ世論に声が届いていない。10年後、この世代の社会的責務が最大化するときに、議論形成を図れるよう、ハフィントン・ポストを言論空間としていきたい。」と述べた。
ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン代表取締役の西村陽一氏は「ニュースやブログ、ユーザーのコメントなどを双方向に結びつけた新しい言論空間がハフィントン・ポスト。メディアとして、ビジネスとしても一つのモデルを新たに作り上げたとアリアナと対話をする中で感じた。」と述べ、既存のマスコミ、ネットメディアとは一線を画すサイトとした。
最後にジミー・メイマン氏が登壇。「ハフィントン・ポストの誕生から8年。1年半前に米国外への展開を考え、カナダ、イギリスでローンチしてきたが、アジアでこれだけ早く展開できると考えていなかった」という。
同氏は、朝日新聞社とのパートナーシップにも触れ「メディアをめぐる変化を受け入れ、迅速に意思決定ができる素地が日本にはある。ドイツでは日本と同じ2012年8月にチームをスタートしたが、まだ開設できておらず、ドイツ人に早くやるように教えている」という。
アジアで日本が初めての進出になった理由について「新聞市場が非常に大きく、オンラインへの広がりもある。グローバル展開の条件は2年後にその地でトップ5のサイトになるという見込みがあり、損益分岐を超えられることを設定している。日本も、当然そのような見込みで参入した」と述べた。
同サイトのマネタイズでは、サイバー・コミュニケーションズが同日、ハフィントン・ポスト上に掲載される広告の独占販売と商品開発についてのパートナーシップ締結を発表している。