「NPS」とは? 日頃の業務で何気なく使っている専門用語。でもその言葉の意味、ちゃんと理解して使っていますか?
ソーシャルメディアマーケティングラボが、なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」 している?!今さら人に聞くのはちょっと恥ずかしい、ウェブマーケティング用語を分かりやすく解説します。
用語説明:【NPS(Net Promoter Score=ネットプロモータースコア 推奨者正味比率)】
ロイヤルティ・マーケティングの権威であるベイン・アンド・カンパニー名誉ディレクターのフレッド・ライクヘルド氏が提唱した、顧客のロイヤルティを測るための指標のひとつで、推奨者正味比率や顧客推奨意向と訳される。NPSの“N=net”は「正味」の意味であり、ネットワークやインターネットとは関係がない。
「あなたがこの企業(あるいは、製品、サービス、ブランド)を親友や同僚(親しい人)に薦める可能性はどのくらいありますか?」」という“究極の質問(Ultimate Question)”に対する回答を、0~10の11段階で調査。10~9を「推奨者(Promoter)」、8~7を「推奨も批判もしない中立者(Passive)」、6以下を「批判者(Detractor)」に分類し、全体に占める推奨者の割合から批判者の割合を引き算した数値がNPS指標となる。NPSは -100~100の間で表される。
2003年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌で発表以降、アップル、アメリカン・エキスプレス、フィリップス、GE、イーベイ、フェイスブック、レゴ、サウスウエスト航空などをはじめ、米国の売上上位企業500社(フォーチュン500)のうち、35%の企業がなんらかの形でNPSを採用していると言われている。
Net Promoter Score、及びNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズによって商標登録されている。
参考:フレッド・ライクヘルド著『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』 http://www.amazon.co.jp/dp/427000147X
解説
企業の成長率、収益性に強い相関を持つ指標として注目されるNPS
多くの企業が消費者との定期的なエンゲージメントを構築し、ブランド・ロイヤルティの向上を目指す時代となり、顧客との関係性を定量的に測定・評価することは大きな経営課題の一つとなっています。これまでは「顧客満足度」調査が広く実施されていましたが、「満足」と答えているにも関わらず、他社乗り換え率が高い、再購入・追加購入につながらないなど、収益性や売上などとの相関性が疑問視される中で、注目され始めたのがNPSです。
「顧客満足度」調査では自身の購買について回答するため、購買時点での肯定的な気分が現れやすくなりますが、NPSは親しい人への推奨という未来の行動について考えさせることで、責任感を伴った、より真剣度の高い回答を得ることが出来ると言われています。また、他者への推奨は「共有」という行動に繋がるため、ソーシャルメディア施策の効果検証指標としても重視されつつあります。
そもそも「人に薦める」という行為は、企業ブランドや商品に対する強い信頼や愛着が無ければ生まれないため、積極的に推奨すると回答した推奨者は、自身の再購入率や顧客維持率も高く、そのクチコミの新規顧客拡大効果も大きいことが分かっています。こうした推奨者が増加し、否定的なクチコミを発する批判者が減少することは企業業績にもポジティブな影響があると考えられるため、NPSは企業の成長率、収益性に強い相関を持つ指標として有効であるとされています。平均的にはNPSが12ポイント増加すると、企業の成長率が倍増すると言われています。
NPSの問題点と日本における課題
NPSは単純化されているため、簡単に測定出来、シンプルでわかりやすいことから評価が高い一方、回答が実名か匿名かや、評価対象との関係性によってスコアが変化しやすいという欠点もあります。また、推奨という行為の可能性を11段階で評価してもらうことは非常に難しいことです。特に推奨者(プロモーター)と中立者(パッシブ)の境界となる9と8の差、中立者(パッシブ)と批判者(デトラクター)の境界となる7と6の差は、人により判断が分かれやすく、ブレが生じやすいでしょう。
さらに、0から10までの評価方法は、米国における学校の採点方法(6点以下は落第点)を基にしているため、日本においては、中央値の5を標準とみなす感覚や中庸気質によって、米国よりもNPSのスコアが低くなる傾向が指摘されています。そのため日本の状況に即した形に進化させる必要があると考えられます。
指標の導入のみに留まらず、NPSの本質的価値の追求を
実際に推奨者(プロモーター)を増やしてNPSを改善し売上・収益成長を実現していくためは、推奨意向と収益性によって顧客グループをさらに分類し、それぞれに応じた施策を検討する必要があります。また、NPSの結果を現場にフィードバックし継続して改善する仕組みや、顧客の信頼を得るために全社的に取り組む志も必要となるでしょう。ライクヘルド氏も、NPSのSは単に指標(Score)を指すだけでなく、SystemでありSpiritsであるべきだとしています。
参考:高見俊介 著『ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略』 http://www.amazon.co.jp/dp/4904336534/
イラスト
速瀬 みさき
1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!
公式サイト : http://www.nanacom.com/
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用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ
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