生理学研究所(NIPS)は4月26日、魚が泳ぐメカニズムとして、脊髄の付け根にあたる「後脳」にある神経細胞群「V2a」が、尾を左右に振り泳ぎをコントロールする指令塔になっていることを明らかにしたと発表した。

同成果はNIPS 岡崎統合バイオサイエンスセンターの東島眞一 准教授らによるもの。詳細は米国生物学専門誌「Current Biology」に掲載された。

魚は、尾を左右に振ることで、泳ぐが、こうした動きは、ヒトの歩行につながる動物の基本的な作動メカニズムと考えられている。

今回、研究グループは、小型魚であるゼブラフィッシュの後脳にあるV2a神経細胞群に、光に反応して神経細胞を興奮させることができる光感受性色素タンパク質「チャネロドプシン」を遺伝子発現させたところ、光をあてることで尾を左右にふり泳ぎ始めることを確認したという。

V2a神経細胞群にGFP(緑色蛍光タンパク質:Green Fluorescent Protein)を遺伝子発現させてことにより緑色に光るゼブラフィッシュの頭部写真。実際には、Chx10プロモーター存在下にGFPを遺伝子発現させた。V2a神経細胞群はこのGFP発現細胞のうち、後脳と脊髄に存在する神経細胞群を指す

また逆に、同神経細胞群に、光に反応して神経細胞の働きを抑えることができる別の光感受性色素タンパク質「アーキロドプシン」を遺伝子発現させたところ、光をあてることで尾を左右にふるのをやめ、泳ぎが止まることも確認したとのことで、これらの結果から、後脳のV2a神経細胞群により、尾を左右に振り泳ぎのリズムをつくる神経細胞の働きがコントロールされていること、ならびにV2a神経細胞群が泳ぎの制御における指令塔として必要十分な働きをすることが判明したという。

後脳のV2a神経細胞群に、光を感じて神経細胞を興奮させることができるチャネロドプシンを遺伝子発現させた魚。この魚の後脳に青色光を照射したところ、光に反応して、止まっていた尾を左右にふりはじめることが確認された

後脳のV2a神経細胞群に、光を感じて神経細胞の活動を抑制させるアーキロドプシンを遺伝子発現させた魚。この魚の後脳に緑色光を照射したところ、光に反応して、左右に振っていた尾が止まることが確認された

なお研究グループでは、ゼブラフィッシュもヒトも脊椎動物であり、そうした脊椎動物の脳幹には同様の種類の神経細胞群があると考えられるため、今回の成果は、脊椎動物の歩行などのロコモーションを制御する主要な神経回路の1つを明らかにしたものと言えると説明している。

今回の成果を用いて、光により、魚の泳ぎのオン/オフを制御しているイメージ