東京医科歯科大学(TMDU)は4月26日、白血球の一種で免疫システムの司令塔である「樹状細胞(DC:Dendritic Cell)」だけを生み出す源の細胞を発見したと発表した。
同成果は同大 難治疾患研究所の樗木俊聡 教授らによるもの。詳細は、4月25日(米国時間)に米国科学誌「Immunity」オンライン速報版に掲載された。
樹状細胞は、2011年のノーベル生理学・医学賞受賞者であるラルフ・スタインマン博士が1973年に発見したもので、現在では、感染など緊急時における免疫応答の発動のみならず、定常状態における免疫寛容)の誘導維持になくてはならない細胞と考えられるようになっている。
血液細胞の源は造血幹細胞であり、樹状細胞も同様だが、同細胞のみに分化の方向性が運命決定された「樹状細胞前駆細胞」が発見できれば、免疫細胞分化系譜への新たな発見という観点に加え、臨床応用の観点からの興味を包含する重要な成果となる。本研究グループは、これまでの研究成果として、スイスの研究グループとの共同研究から、樹状細胞前駆細胞を同定したことを報告していたが、同前駆細胞から分化する樹状細胞の大多数が従来型であった。しかし、形質細胞様樹状細胞への分化能に優れた「形質細胞様樹状細胞多産性」前駆細胞の存在が予測されており、その細胞の同定が期待されていたという。
そうした期待を受け、研究グループでは研究を継続。マウス骨髄細胞を用いて従来報告していた樹状細胞前駆細胞と近縁の分画を調査した結果、形質細胞様樹状細胞への分化能に優れた「形質細胞様樹状細胞多産性」前駆細胞の同定に成功したという。
同前駆細胞は、これまで報告されていたものに比べ、形質細胞様樹上細胞を7~8倍多く作り出すことができることが確認されたという。
また、形質細胞様樹状細胞の分化に必須の転写因子E2-2を高く発現していることも確認されたほか、樹状細胞のみを作り、他の血球細胞をまったく作らないことが確認されたため、これまで報告していた樹状細胞前駆細胞と合わせて「共通樹状細胞前駆細胞」と定義したという。
さらに、共通樹状細胞前駆細胞が、多能性前駆細胞から直接分化する経路の存在も確認したとする。
樹状細胞は現在、感染症やがんに対するワクチンの標的細胞として注目されているが、なんら感染のない定常状態では、むしろ免疫寛容の誘導・維持を介して自己免疫病を抑制していることも明らかになってきていることもあり、研究グループでは今回の発見は、感染症やがん、自己免疫病に対する、新たな予防・治療技術の開発につながることが期待されるとコメントしている。