島津製作所は4月25日、光学顕微鏡と質量分析計を融合した新たな分析計測機器であるイメージング質量顕微鏡「iMScope」を開発し、発売を開始したことを発表した。

従来の質量分析法では、試料となる生体組織を破砕したり、物質を抽出して得られた混合液体を液体クロマトグラフィなどにより分離してから目的分子を測定するため、ある分子が試料のどの部位や場所に高濃度で存在しているか、あるいは試料中の興味のある場所にどのような分子が高濃度で存在しているのかは分からいという課題があった。

同計測器は、見ているものや、見ている場所に含まれている分子をそのまま質量分析したいというニーズに対応するために開発されたもので、独自技術である高収束レーザ光学系と、高精度な試料の位置移動を可能にした三次元試料ステージ駆動システムにより、イメージング質量分析としては世界最高となる5μm以下の質量分析画像の取得を実現したという。これにより、網膜のような10μm程度の大きさの微細構造を持つ組織でもその内部の分子の分布状態を観測することが可能となるほか、併せて提供を開始した自動前処理装置「iMLayer」により簡便な操作で高解像度イメージング質量分析に適した試料の準備が可能になるという。

また、イオン源に大気圧下でイオン化が可能な大気圧MALDIを採用したことで、観察した試料をそのまま質量分析することが可能となった。そのため、真空MALDI法に比べて、装置の立ち上げ時間を短縮できるだけでなく、揮発性分子や生きた状態に近い組織分析が可能となるほか、専用ソフトウェア「Imaging MS Solution」を活用することで、光学顕微鏡画像上でイメージング質量分析条件の設定が可能となったり、あらかじめ設定ファイルとして用意されているいくつもの分析条件を用いることで、面倒な条件設定を行うことなく、光学顕微鏡を覗くような感覚でイメージング質量分析を行うことが可能だという。

さらに、1kHzの高速Nd:YAGレーザと複数回のレーザ照射によってイオン化されたイオンを質量分析計で保持して、一度に質量分析する独自技術により、同社の既存の質量分析装置を用いた測定と比較し100倍以上の高速イメージングを実現したという。これにより、例えば2.5mm角の大きさで10μmの解像度でイメージング質量分析を行った場合、従来装置では約10日間かかっていた分析が約3時間で終了できることとなる。また、正常な細胞とがん細胞との比較など、2枚の質量分析画像を取得する必要がある場合でも、約6時間で分析が完了できるため、研究・開発速度の向上が可能になるとする。

なお、同計測器の価格は1億5000万(税別)で、同社では年間20台の販売を見込む(欧州、北米を除く地域にて)としている。

イメージング質量顕微鏡「iMScope」