ルネサス エレクトロニクスは4月22日、アナログ回路の構成や特性をマイコンからの制御で変更可能な「Smart Analog」の低電圧・低消費電力版「IC300」シリーズ2品種を発表した。
「IC300」シリーズは、従来品の動作保障範囲が3.0V≦VDD≦5.5Vに対し、2.2V≦VDD≦3.6Vと低電圧化しており、消費電力も最大62mWから22.4mWへと削減している。白物家電、ヘルスケア機器、防犯装置などに加え、バッテリ駆動のセンサ搭載機器への応用も容易になり、長時間稼動やバッテリの小型化によるシステムコスト低減が可能となる。センサアプリケーション対応版では、回路構成を変更できる製品の他、計装アンプに固定した製品を揃えており、システムにより最適な製品を選択できる。
「Smart Analog」は、動作中にも回路構成の変更や特性の設定を行なえるため、複数のセンサを接続し、センサに応じた回路構成や特性を動作中時分割で切り替えることができる。センサ入力端子も複数有しており、複数のセンサからの信号へもスムーズに対応でき、複数のアナログフロントエンド回路の機能を1チップで実現している。加えて、アナログ回路の間欠動作も可能であり、システム全体の低消費電力化も図れる。
また、アナログフロントエンド回路を1チップ化することで、マイコン制御によりセンサの種類にあわせて回路構成と特性を変更できる機能を有している。反転アンプ、非反転アンプ、I/V変換、計装アンプを実現でき、それらのオフセット電圧も調整できる。このため、電圧、電流、差動出力といった異なるセンサ出力に対し本製品1つで対応可能になる。
加えて、回路構成変更、特性設定用のGUIツールを準備している。このため、ブレッドボードや基板上にアンプや可変抵抗やコンデンサなどをはんだ付けして回路調整を行うことなく、GUIツールからパラメータを変更するだけでシステム開発を短期間に行うことが可能。さらに、加速度、圧力、磁気、光、温度など、11群1000種を超えるセンサの事前評価が行えるWebシミュレータ「Renesas VA」も準備されている。
アナログフロントエンド回路を1チップ化していることで、オペアンプ(アナログ演算回路)などのディスクリート部品で構成した場合に比べ、従来比で部品点数を約90%、基板サイズを約75%それぞれ縮小できる。また、多数のアンプや抵抗、コンデンサの在庫管理を行うことなく、1種類の「Smart Analog」を用いるだけで様々な製品の展開が可能になる。
この他、センサ搭載製品を製造する際、センサ特性のバラつき吸収を目的としたトリミングやキャリブレーションを手作業で行なうのが一般的だが、「Smart Analog」はマイコンによって様々な状況に応じたアナログ回路の構成変更や特性設定を行なえるため、製造段階でのトリミングやキャリブレーションの自動化が可能となる。これにより、製造コストの低減が図れると同時に出荷後のセンサの経時変化に対する補正による長寿命化も可能となり、センサ搭載製品の校正やメンテナンス費用トータルの低減が可能になる。
なお、「IC300」シリーズのサンプル価格は、回路構成可変型が520円、計装アンプ固定型が350円。4月よりサンプル出荷を開始し、6月より量産開始の予定。