富士通セミコンダクター(FSL)は4月22日、低炭素社会に寄与するエナジーハーベスティング電源ICとして、降圧型DC/DCコンバータ「MB39C811」、昇圧型DC/DCコンバータ「MB39C831」の2品種を発表した。

降圧型DC/DCコンバータ「MB39C811」(左)と、昇圧型DC/DCコンバータ「MB39C831」(右)

エナジーハーベスティング(環境発電)とは、身の回りの環境に存在する光や振動など未利用の微小エネルギーを収穫(ハーベスト)して電力に変換する技術のこと。ワイヤレスセンサネットワーク用センサノードなどの電源への適用が期待されており、低炭素社会の実現に寄与する。今回発表された2品種はエナジーハーベスティングの実用化に向けた電源ICとなっている。

「MB39C811」は、低損失のブリッジ整流器を内蔵した高効率の降圧DC/DCコンバータで、回路設計の最適化により、静止電流1.5μAの低消費電力を実現し、センシング機器などの電池レス化を実現する(図1)。デュアルブリッジ整流器では、自然界の振動(X、Y、Z軸方向)のうち、2軸の振動成分からエネルギーを収集する。また、8つの出力電圧を選択でき、最大100mAの出力電流を供給する。光環境発電・振動環境発電など複数の素子から電力を1つの製品で同時に収集し制御できるのは、同製品が世界で初めてという。なお、採用されている低消費電力回路技術は、FSLと富士通研究所で共同開発されたものだ。

図1 「MB39C811」のアプリケーション概念図

一方の「MB39C831」は、単セル・多セルの太陽電池、または熱電発電素子により得られるエネルギーを、リチウムイオン電池に効率よく供給する、同期整流昇圧DC/DCコンバータで、照度や温度差などの環境に応じて変化する発電素子の最大動作点に追随して出力を制御するMPPT機能、およびリチウムイオン電池を安全に充電する保護機能を内蔵している。MPPT機能とは、この最適な動作点の変化を自動的に追随して最大出力を得る機能であり、これにより高い効率で電力を取り出して供給することができる。また、低電圧回路技術により、0.35Vからの起動を可能とし、ワイヤレスセンサーネットワークなどの各種アプリケーションに対応するという(図2)。

図2 「MB39C831」のアプリケーション概念図

なお、価格は2品種とも800円。6月より量産出荷を開始し、2014年には2品種合計で月産80万個規模まで引き上げる計画。