NECビッグローブは4月22日、サーバとネットワークの双方をソフトウェアから統合管理できるデータセンター仮想化を実現したと発表した。サーバだけでなくネットワークも仮想化したことで、インフラ構築に2週間かかっていたところを、約10分で完了できるようになったという。

NECビッグローブ 基盤システム本部 エキスパート 田口敏宏氏

サーバ仮想化は、必要なときに必要なぶんだけ、ものの数分で構築することができるというメリットが企業ニーズにマッチし、瞬く間に浸透したが、一方でネットワークは相変わらず物理環境で、構築や変更のたびに多数の機器の複雑な設定が必要なままであった。そのため、セキュリティ対策や冗長化、他のクラウドとの連携を図ろうとすると、個別のインテグレーションが必要であった。

NECビッグローブ 基盤システム本部 エキスパート 田口敏宏氏は、「サーバは仮想化により、簡単に構築できるが、ネットワークは仮想化が進んでおらず、現地での作業が必要で、構築に時間がかかる。サーバは5分で構築できるが、ファイアウォールや専用ネットワークが自由に使えないため、セキュリティ強化が困難で、クラウドサービスと基幹システムを安全に接続できないという課題があった」と説明する。

これまでは、ネットワークがインフラ構築のネックに

そこで同社では、SDN(Software-Defined Networking)技術を導入し、スピードと柔軟性を備えた理想のデータセンターを目指したという。

同社では、「SDN」、「テータセンターの仮想化の実現」、「インフラ設計が不要な世界」の3つのステップで理想のデータセンターを目指す。

理想のデータセンター構築のための3つのステップ

SDNに関しては、2012年の9月にSDNを実現するOpenFlow技術をベースに、NECが独自に開発した「ProgrammableFlow」と共通の基盤を活用してネットワークを仮想化。2013年4月には、仮想化したサーバとネットワークを連携させ、統合して制御するコントローラ「momiji」を独自に開発。ネットワークリソースの確認、個別の機器のネットワーク設定・管理、サーバとネットワークの接続といった作業を自動化した。これにより、これまで2週間かかっていたインフラ構築は10分で完了できるようになったという。

NECのSDNへの取り組み

「momiji」により、仮想化したサーバとネットワークを連携させ、統合して制御することが可能に

「momiji」による仮想サーバの設定

「momiji」による仮想化ネットワークの設定

2週間のインフラ構築を10分に

これまで2週間を要した具体的な作業内容。この部分を「momiji」に移行

「momiji」では、各機能がモジュール化されているため、今後の機能強化もモジュール単位で行えるほか、仮想化スイッチどうしの接続にはトンネリングプロトコル「VXLAN」を採用。物理ネットワーク装置の設定を変更することなく、データセンター同士の接続や、企業のオンプレミス環境との接続など、複数の拠点を接続できる。構築できるVLANの数も4000から1600万に、事実上、制限を開放した。

「momiji」では、各機能がモジュール化

VLANの数も4000から1600万に

そして、今後は3ステップ目として、OpenFlowによるパケットの書き換えにより、サービス成長にともなうセキュリティの強化や可用性向上などをサーバ設定を一切変えずに実現し、現在5日間程度要しているインフラ設計の部分も自動化し、数分でネットワークの専門知識が不要なシステムの構築を目指すという。

OpenFlowによるパケットの書き換え

VLANの数も4000から1600万に