大阪大学(阪大)は4月18日、口蓋が完成する前後における口蓋突起の遺伝子発現のデータベースを作成し、その中から強く発現する細胞接着因子「CEACAM1」を発見し、口や顔ができるメカニズムの一部を解明したことを発表した。
成果は、阪大大学院 歯学研究科の阪井丘芳教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間4月17日付けで米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。
胎生期において、左右の突起が顔の正中(中心)で細胞同士が接着して癒合することにより、口と顔の中心部が形成されていく。それがうまくいかない場合、鼻の下にある縦の溝(ツボの「人中」があるところ)がつながっておらず、上唇が割れている「口唇裂」や「口蓋裂」という病気が発症してしまうことがある。
それらの病気は遺伝的要因と環境的要因によって発症し、日本国内においても600人に1人の割合で生じる難病の1つだ。口唇裂や口蓋裂は言語、摂食、嚥下を初め、口腔・顔面領域にさまざまな機能障害をもたらしてしまう。今回の研究は、口蓋が完成する機構を明らかにすることにより、口唇裂・口蓋裂の発症の予防法を確立することを目標として、口や顔の形成に重要なメカニズムである「細胞接着」に着目して行われた。
細胞接着は、発生、ガンの浸潤・転移、免疫、再生を含めたさまざまな生物学的現象にとって重要な役割を占めている。細胞接着が破たんすると口腔・顎顔面形成に支障を来し、前述したように口唇裂・口蓋裂が発症してしまうのである。
マウスを用いた実験から、遺伝子CEACAM1の発現を抑制すると口蓋の癒合が阻害されることが判明。さらに、同遺伝子を欠如させた場合は、口蓋癒合が遅れてしまうことがわかった。CEACAM1の発現は、増殖因子「TGF beta(Transforming growth factor beta)」によって調節されており、口や顔面の形成における口蓋突起の初期接着に重要な働きをしていることが明らかになった次第だ。
研究チームは、今回の研究により、口や顔の発生時期における細胞接着に対する重要性が認識され、口唇裂・口蓋裂などの形成異常を予防・治療するための研究が進展すると期待されるとしている。