ロームは、サーバ電源、産機、省エネ家電などの電源やPFC回路向けに新しいデバイス構造を採用し、機器の大幅な省エネ化に寄与する高耐圧トランジスタ「Hybrid MOS」を開発したと発表した。
新型トランジスタは、スーパージャンクションMOSFETとIGBTのデバイス構造を融合させることにより、MOSFETの高速スイッチング特性・低電流性能とIGBTの高耐圧特性という両方の特性を兼ね備えることに成功した。これにより、大電流時から小電流時までフルレンジでの省エネ化が可能となる。
省エネ法の改定により、家電製品はより使用実態に近いエネルギー消費効率を示すAPF(Annual Performance Factor)を表記する傾向にあり、定常運転時における省エネ化の動きが高まっている。通常、高効率な機器を実現するためには電源の高効率化が必要なため、省エネ機器などのPFC回路においては、高速スイッチングや低電流性能にメリットがあるスーパージャンクションMOSFETが使用されていた。一方で、高温・大電流性能が必要となる産機など、ハイパワー化する省エネ機器分野のPFC回路では、スーパージャンクションMOSFETでは対応できずIGBTが搭載されていたが、効率面での課題を改善する必要があった。
今回、ロームはスーパージャンクションMOSFETで培った技術を活かし、ウェハ裏面を制御するという新たな構造を採用することで、スーパージャンクションMOSFETのメリットを維持したまま、高温・大電流性能の向上を実現した。これにより、 定格保証域が向上しただけでなく、高速スイッチング、低電流特性を含めたすべての特性において高性能が保証できるようになるため、応用機器範囲も広がる。また、従来高温・大電流性能を必要とし、IGBTを使用していたハイパワー分野においても、高速スイッチングや低電流のメリットが提供できるため、機器の大幅な省エネ化にも寄与するという。
なお同社では今後は、新型トランジスタ「Hybrid MOS」のラインアップを拡充することで、各種機器のさらなる省エネ化に貢献していくとしている。同製品は2013年の夏頃よりサンプル出荷を開始する予定。